6.サウルとサムエルの軋轢

エピソード文字数 976文字

サムエルはイスラエルの民に向かい、サウルが王となったことを宣言した。

彼は士師としての権威を王としてのサウルに譲り渡した。

そして主を称え、主に背けば王共々に滅ぼされるであろうと述べた。

王制にしたとしても神様の権威は揺るがへん。

サムエルはヴァチカンの法皇みたいな立場になったんやな。

そしてサウルが王になった後も影響力を持ち続ける。

なんてったって『サムエル記』だからね。

イスラエルは蜂起し、ペリシテ人と戦った。

サウルの息子ヨナタンは敵の守備隊を打ち破り活躍した。

しかしペリシテ人の反撃により、イスラエルの人々は窮地に陥った。

一進一退。

これぞ戦いの醍醐味やで。

当人たちはたまったもんじゃないと思うけどね。
イスラエルの兵たちは怯え隠れて過ごす。

ペリシテ人に殺されるかもしれない恐怖に耐えかねて逃げる者もいた。

生きる者は常に死と隣り合わせ。

けれど普段はそれを忘れている。

己の死を直視できたなら幸いね。

現存在、かくあれかし。

兵が離散してしまえば完全に負けだ。

そうなる前にサウルは神に生贄を捧げて必勝祈願を行いたい。

けれどサウルはサムエルと事前に約束をしていたんだ。

生贄を捧げる際には、七日間サムエルが来るのを待つことを。

なるほど。

そんで、サムエルは七日目に来たんか?

いや、来なかった。

そうしている内にも兵の数は減っていった。

サウルは七日間待った。

けれどサムエルは来ない。

だから仕方なく、サムエルが来る前に儀式を執り行ったんだ。

しゃあない。

戦争中で、なかなか辿り着けんこともあるやろしな。

しかしこれがサムエルの怒りを買ってしまう。

儀式が終わったところにサムエルが来たので、サウルは彼を出迎えた。

サムエルはサウルを非難し、その治世が長続きしないと告げたんだ。

七日間という約束を守れなかったのはサムエルでしょう?

随分と勝手なことを言うのね。

サムエルはサウルに言った。

「あなたの王位は続かないでしょう」

「主はみ心にかなう人を探しあて、民の君主に定めました」

サムエルは立ち去った。

なんちゅうか、人が一所懸命働いてるところに文句だけつけに来とんな。

なんか身近にそんなんおった気ぃするんやけど、誰やったかな。

それを言えば角が立ちましてよ。

わたくしとしては、大いに同意するところですけれど。

現実主義的なサウルと理想主義的なサムエル。

こうした対比は世界中、古今東西に見られる関係性さ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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