11.神々の末路

文字数 1,242文字

『エレミヤ書』のクライマックスだ。

周辺諸国の末路を予言する。

その第一はエレミヤも共に移動した先、エジプトについてだった。

ギレアドに上り、バルサムを取れ、おとめである娘エジプトよ。

多くの薬を無駄に使うが、お前に癒やしはない。

バルサムとは強い香りを持つ含油樹脂のこと。

アラブの伝統ではシェバの女王がソロモン王にもたらしたものとも言われます。

ヨルダン川東側の地域ギレアドの名産でもあったのでしょう。

ギレアドのバルサムが薬のことなんやな。

そんで、それ取って使うけど無駄や言うてるんか。

相変わらず意地の悪い話やで。

なぜ、アピスは逃げ、お前の雄牛は踏みとどまらなかったのか。

主がそれを突き倒されたからだ。

イスラエルの神、万軍の主は仰せになる、

「見よ、わたしはテーベのアモン、ファラオとエジプト、

その神々と王たち、ファラオと彼に寄り頼む者たちを罰する。」

国の行く末と神々の末路は同じだ。

イスラエル人が戦ったわけでなくとも、滅びは神によってなされるのさ。

ペリシテ人をみな滅ぼす日が来ている。

ティルスとシドンを助けることができる残った者をみな

絶ち滅ぼす日が来ている。

まことに、主はペリシテ人を、カフトル島の残りの者を滅ぼす。

ペリシテ人言うたら、ダビデと戦ったゴリアテがそれやな。

イスラエルにとっては因縁深い相手やろ。

ティルス、シドンはペリシテ人の同盟国だった。

カフトル島とはクレタ島のこと。

ペリシテ人に関連するもの全てを根絶やしにしようと言う。

モアブは破壊され、その叫び声はツォアルまで聞こえる。

ケモシュはその祭司たちと高官たちとともに、捕囚となって出ていく。

ケモシュはモロクのことを示すんやったな。
子供の生贄を欲する神。

バビロニアはそんなものまで捕囚したがるのかしら。

バビロニア王国において、各自の信仰は認められているからね。

モアブ人と一緒に捕囚されたってことになるんだろう。

なぜ、ミルコムがガドを手にし、その民がガドの町々に住んでいるのか。

まことに、ミルコムがその祭司や高官たちとともに捕囚として連れていかれる。

ミルコムもまたモロクの別名だ。

同一の神に様々な名があることはよくある。

もしかしたら、バラバラだった神の習合した姿なのかもしれない。

その他、エドム、ダマスカスについて託宣を残す。

そして最後にバビロニアについての預言がなされる。

バビロンは取られ、ベルは辱められた。

マルドゥクは破壊され、その像は辱められ、その偶像は破壊された。

右のおっさんがマルドゥクやな。

何と戦ってるとこなんやろ。

この絵をマルドゥクと解釈した場合、その相手はティアマト。

原初の海の女神だね。

ただし諸説あって、これは怪鳥アンズーとニヌルタを示すという説もある。

どちらという決着はついてないと思うよ。

「ベル」はヘブライ語の「バアル」のことですわね。

ここでは「主」を意味する言葉。

すなわち、主マルドゥクは破壊されるということ。

諸国を圧倒したバビロニアもまた滅ぶ。

盛者必衰のことわりでしてよ。

『エレミヤ書』についてはここまでだね。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色