6.メメント・モリ

エピソード文字数 947文字

メメント・モリ(memento mori)はラテン語で「死(mori)を想え(memento)」

訳し方は色々で、「自分が死ぬことを忘れるな」とか言うね。

そう言われても、自分がすぐ死ぬとか考えながらは生きていかれへん。

身近な人が死なへん限り、大抵は死を忘れて生きるもんや。

「人は、いつか必ず死ぬということを思い知らなければ、生きているということを実感することもできない」

20世紀最大の哲学者とも呼ばれるマルティン・ハイデッガーの言葉ですわ。

人は永遠に生きられない。

そのことを理解した上で、今どう生きるかをよく考えようってことだね。

メメント・モリに対比するカルペ・ディエム(carpe diem)という言葉がある。

これは「その日を(diem)摘め(carpe)」と訳される。

一日一日を大事にしようという趣旨になる。

『コヘレト』第9章7節

さあ、行って、楽しみのうちにあなたのパンを食べ、

心地よくあなたのぶどう酒を飲め。

神はすでに、あなたの行いを喜んでおられる。


『コヘレト』第9章10節

あなたの手の力でできるすべての仕事を行え。

あなたの行く陰府(よみ)には、働きも企てもなく、

知識も知恵もないからである。

コヘレトは言う。

善人も悪人も、賢者も愚者も等しく皆死ぬ。

神が与えてくれた空しい日々を受け取って楽しめと。

それだけ聞くと、やけっぱちみたいに響くな。
せやけど、割り切って楽しもうみたいな前向きさも感じるわ。
似たような話だけど、もう少しストイックな見方もある。

江戸時代中期に書かれた『葉隠(はがくれ)』に有名な言葉がある。

「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」

毎朝、毎夕、改めては死ぬ死ぬと、常住死身に成つてゐるときは、

武道に自由を得、一生落度なく、家職を仕果すべきなり。

自らを死んだものと思うことで、むしろ思考に自由が得られます。

そうすることで日々、しっかりと働くことが出来るということですわね。

さすが日本人は、お堅いのが好きやなあ。
日々飲み食いを楽しめではなく、仕事がきちんと出来ると言う。

数百年かけて仕上がった気性はなかなか変えられるもんでもない。

ともあれ、いつの時代も、どこの世界でも、死は重大なテーマだった。

この恒久的かつ普遍的なテーマを扱っているからこそ、聖書は読み継がれる。

そんな気がするね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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