3.エルサレム滅亡の啓示

文字数 1,119文字

もう何度も繰り返し語られていることだけれど。

エルサレムは滅亡する。

バビロニアに攻囲され、中では飢えがはびこっていた。

口にする食物の量は一日につき二十シェケルとし、

それを決まった時間に食べなさい。

飲み水は六分の一ヒンとし、それも決まった時間に飲みなさい。

パンは大麦のパン菓子のようにして食べ、

人糞を用いて彼らの目の前で焼きなさい。

1シェケルはだいたい11.4グラム。

20シェケルは228グラム程度になりますわね。

市販されている6枚切りの食パン、1枚の重さは約63グラム。

228÷63≒3.6(枚)

20シェケルの食物とは、食パン4枚に満たぬ量と言えましょう。

さらに1ヒンはおよそ3.8リットル。

3.8÷6≒0.6(リットル)

500ミリリットルのペットボトルよりは少々多い程度ですわ。

それっぽっちで生きていくとか、通常の生活でもしんどいのに。

さらにバビロニアと戦争中やなんて、やってられへんやろ。

てか、人糞で焼けってのはどういうことや。
古来から動物の糞はよく燃えるので、その燃料にされたのさ。

現代でもその風習は残っている。

例えばインド北部では牛糞を円盤状に固めて干した「カンダー」というのがある。

そんなものを燃やして、臭くなりませんの?
乾燥してしまうと臭いもほとんどないらしい。

ただし、煙がすごく出るんだとか。

狼の糞を一緒に燃やして狼煙(のろし)にするのに似た状態だね。

当時のエルサレムは兵糧攻めにあっている最中。

食べられるものは皆食べているだろう。

動物の糞が得られないから、人糞で代替しようというのさ。

辛いなあ。

トーラーで定められた、食べたらあかん動物はおらんかったんやろか。

どうだろうね。

食べたんじゃないかな?

なんせ偶像崇拝が盛んということは、神の教えに背いていたわけだ。

飢えに抗ってまで神の教えに従う人は少数派だろう。

(バビロン捕囚後、捕囚地から神の手によりエゼキエルが連れられる)

わたしは主の神殿の北の門の入り口に連れていかれた。

するとそこでは、女たちが座り込んでタンムズのために涙していた。

あらあら。

よもや神の神殿の扉近くでバビロニアの神を拝もうとは。

タンムーズは女神イシュタルの夫でしてよ。

そんなん、寺の前で十字架掲げるようなもんやろ。

喧嘩売っとんのか。

当然、神は怒り心頭。

ケルビムを従えて神が預言を授ける。

エルサレムに残る者たちは偶像崇拝を是としている。

神は彼らと共にあらず、捕囚民の「聖所」となるという。

つまり、神殿が無くとも捕囚民と共に神が現存しているということだ。

いずれエルサレムに残った民は一掃されると言った。

これら預言のあらましを、エゼキエルは捕囚民たちに告げた。

自分たちは正しいという確認の意図もあったかもしれないね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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