1.寓話としてのラブソング

エピソード文字数 770文字

『雅歌』は聖書の中でもやや特殊な内容になっている。

主に花嫁と花婿が互いに愛を語らっていて、神の名が全く出てこない。

そもそもこれを「正典」に含めるか否かも議論の的となったらしい。

あらまあ。

神のいない聖書。

とても素晴らしいですわ。

やはり「愛」と言うからには若い男女のエロースでなくては。

髭はげ爺のアガペーなんぞ、身の毛がよだちましてよ。

ねえ、お姉さま?
うちもビヨンデッタも若くはないんやけどな。
うちはちゃんと神様の愛もありがたいもんやと思うとるで。

なんせ天使やさかい。

神が髭はげ爺かどうかは知らないけどね。

『雅歌』については伝統的に「寓話」であるという解釈がされて正典となったんだ。

花嫁と花婿は比喩表現であるというわけさ。

花嫁と花婿は何か別のもんを表しとるっちゅうわけやな。
そうだね。

ユダヤ教の伝統では、花嫁はイスラエルの民、花婿は神を表す。

また、キリスト教においては当初花嫁を人類、花婿を神としていた。

それが後に人類は教会になり、神はイエス・キリストとされた。

つまり花嫁は教会であり、花婿はイエス・キリストになったんだ。

わたくしには、好き勝手解釈を変えているように思えますわ。

何故、二人の愛を神だの教会だのにすげ替えなくてはならないのかしら。

ラブレターが1000年後とかに発見されて、

「これは神について書かれたものだ!」

とか言われるかもしれへんな。

まあ、言うて『雅歌』はれっきとした諸書の一つ。

そこに神の意思が隠れてるってのは分かる気するけどなあ。

フランシスコ会聖書研究所の解説では、比喩ではないという解釈も多いらしい。

『雅歌』はあくまでも人間の自然な愛の語らいだと言うわけだ。

聖書は男女による自然な愛を称える。

そしてその正しさを『雅歌』において宣言している。

そういう風なとらえ方だね。

これが西野カナの「トリセツ」とかやったら大変なことやで。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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