11.真の幸福を得る者

文字数 1,109文字

ベルゼブル論争では、イエスが悪霊で悪霊を追い出しているという声があがった。

イエスは、サタンが仲間割れして、どうして国を成り立たせるのかと反論した。

悪魔の世界にもちゃんと国があるという前提が面白いよね。

わたくしどもが仲良しなのは確かかしら。

ねえ、サタニャエル?

もちろん、仲良しだともビヨンデッタ。

さて、悪霊は追い出された後、砂漠を歩き回る。

砂漠は悪霊の住処とされていたんだ。

『レビ記』第16章10節

アザゼルのためのくじに当たった山羊は、荒れ野のアザゼルへ送り出して、

贖いをするために、主の前に生かしておく。

しかし悪霊は休息の場を求めて「出て来た家に戻ろう」と言い出す。

しかもより悪い七つの霊を連れてくる。

悪霊は一度追い出してもまた戻って来る性質があると言うのさ。

めんどくさいやっちゃな。

そんなら、何度でもイエス様の名のもとに追い出すしかないか。

イエスがこれらのことを話しておられると、群衆の中の女が声をあげた、

「何と幸いなことでしょう。あなたを宿した胎、あなたが吸った乳房は」。

しかし、イエスは仰せになった、

「むしろ幸いなのは、神の言葉を聞き、それを守る人々である」。

悪霊が何度も戻って来る。

イエスの名のもとにそれを追い払う。

そういうロジックなら、最初からイエスを抱えていればいい。

だからこの女性は、悪霊を寄り付かせない存在としての聖母マリアを賛美したんだ。

せやけど、それやとマリア様しか守られへんことになる。

イエス様が反論してるのはそういうことか。

信仰を大事にすることが悪霊を寄り付かせへんことに繋がるわけや。

裁きの時には、南の女王が今の時代の人々とともに立ち上がり、この人々を罪に定める。

彼女はソロモンの知恵を聞くために、地の果てから来たからである。

しかし、見よ。ここにソロモンに勝るものがある。

南の女王とは、シェバの女王のことですわね。

ソロモンの知恵に感服し、財宝を授けたという。

Fate/Grand Orderではミドラーシュのキャスターとして活躍したんやで。
ソロモン自身は他国の妻を大勢娶り、偶像崇拝を行ったとされている。

だから彼自身は知恵にあふれていたとしても信仰は薄い。

それに対してシェバの女王は彼の知恵に対して惜しみない称賛を贈った。

この点においてシェバの女王はソロモンに勝って敬虔だったのさ。

また、魚に呑まれたヨナの話も持ち出して言う。

ヨナの言葉を聞いてニネベの人たちは悔い改めた。

シェバの女王にせよニネベの人たちにせよ、ユダヤ人ではないという共通点がある。

そこから真の幸福に繋がりますのね。

真の幸福とはイエスに物理的な距離で近づくことではない。

神の言葉、すなわちイエスの教えを聞き、守ることであると。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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