1.コリント教会の派閥争い

エピソード文字数 1,396文字

コリント教会か。

ところで、コリントってどこらへんのことなん?

現代で言うコリントス、ギリシアのペロポネソス地方にある都市だね。

古代ギリシアではアテナイやスパルタに並ぶ主要な都市国家だったらしい。

兄弟たち、仲間割れなどせずに、団結してください。

あなた方は各々、「わたしはパウロのもの」「わたしはアポロのもの」

「わたしはケファのもの」「わたしはキリストのもの」と言っているそうではありませんか。

草どもは、数が増えれば派閥を作りたがるもの。

子供ですら好き同士でグループを作りましてよ。

新興の教会もまた例外ではございません。

組織が大きくなれば必ず起こる問題だ。

大事なことはそれを放置せず、いかに処理していくか。

それが学校なら3年経てば勝手に消えてくれる。

けれど会社なんかだと、いずれ組織の害になりかねない。

最悪の場合、組織そのものを分裂させ、弱体化を招いてしまう。

パウロはそうならぬよう手紙で注意を促すのさ。

パウロ派、アポロ派、ケファ派にキリスト派がおるってわけやな。

パウロとキリストは分かるけれど、他の二人は誰のことやろ。

アポロの名は『使徒言行録』にありましてよ、お姉さま。

確か、アレクサンドリア生まれの雄弁家だったとか。

『使徒言行録』第18章24節

さて、アレクサンドリア生まれのアポロというユダヤ人が、エフェソにやって来た。

彼は雄弁家で、聖書に精通していた。

コリントで最初に宣教したのはパウロだと言われている。

そしてその後に来たのがアポロだった。

アポロは雄弁家として知られていて、人気も高かったんだろう。

それでパウロ派とアポロ派みたいなグループが生まれてしまった。

なるほどなあ。

そんで、ケファは何者なんや?

ケファはシモン・ペトロのことだよ。

『ヨハネによる福音書』にその名が出ている。

『ヨハネによる福音書』第1章42節

アンデレはシモンをイエスの所に連れていった。

イエスは彼を見つめて仰せになった、

「あなたはヨハネの子シモンであるが、これからはケファ――訳すと『岩』――と呼ばれるであろう。

ペトロもなんやかんやで色々と奇跡起こしとるし。

なんちゅうてもイエスの最初期の弟子やしな。

ペトロ派になりたいって気持ちも分かるわ。

そして最後はキリスト派ですわね。

そんな有象無象ではなく、イエス・キリストのみに従えと。

ならばこれこそ正しい派閥ではないかしら?

パウロにしてみれば、どれも一緒だ。

どの派閥が正しい、なんてことはないのさ。

全ての派閥は教会を分裂させる原因となりうる。

それは困ると言うわけだ。

ある人は「わたしはパウロのもの」と言い、

また、ある人は「わたしはアポロのもの」と言ってるようでは、

あなた方は生まれながらの人間にすぎないのではありませんか。

「人間」にすぎない、と?

すぎないもなにも、最初から最後までただのひ弱な草に過ぎませんことよ。

派閥争いなんか意味が無い。

自分たちは皆、キリストの奉仕者だ。

人を裁くのは他の誰でもない、神のみが裁く。

せや。

人は神様の前に平等なんや。

あなた方は、どちらがよいと思いますか。

わたしが鞭を携えて行くことですか、それとも、愛と柔和な心を抱いて行くことですか。

そら「愛と柔和な心」に決まってるやろ。
パウロは明確にコリントの人々を子ども扱いしている。

派閥争いなんかは、それくらいのことだとでも言いたげにね。

しかし後のキリスト教を見て、パウロの気持ちが伝わったとは思えませんわね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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