7.エサウとヤコブ

エピソード文字数 1,361文字

アブラハムの子イサクは妻リベカとの間に二人の子、エサウとヤコブを授かった。

エサウは巧みな狩人となり、ヤコブは穏やかな人となった。

イサクはエサウを愛し、リベカはヤコブを愛した。

父と母、兄と弟。

なんやしらんけど、不穏な空気を感じるなあ。

その通り。

エサウとヤコブは兄弟間でちょっとした確執を持つんだ。

カインとアベルみたいなもんやな。

あれは兄のカインが弟のアベルを殺したんやったか。

エサウとヤコブの関係は、カインとアベルほど殺伐とはしていないけれどね。

もう少し続きを追いかけてみよう。

ある日やヤコブが煮物をつくっていると、エサウが疲れて帰ってきて言った。

「その赤いものを食わせてくれ。私は飢え、疲れている」

「それでしたら、まずあなたの長子の権利を売ってください」

「私は死にそうだ。長子の権利など何の役に立とうか」

「今すぐ、誓ってください」

こうしてエサウは長子の権利を軽視した。

ん?

つまり、どういうこと?

元々エサウが長子だったけれど、その長子の権利をエサウが放棄したんだね。

長子の権利というのは、ヘブライ人の家庭で長男がもっていた特別の権利。

父親が死んだとき、長男は、父の全財産のうちから、他の兄弟の2倍を相続したらしい。

それと家族全体にかかわる決断をする権利があったんだ。

エサウ、やってしもたな。
イサクは年を取り、目がよく見えなくなった。

ヤコブは母リベカの助言に従い、(イサクの愛する)兄エサウの振りをした。

そうしてヤコブはエサウが得るはずだったイサクの祝福を得た。

ヤコブ……。
騙される方が悪いんだよ。
ただ、今回ばかりはさすがにエサウも黙っていなかったね。

その後、ヤコブを殺そうとするんだ。

やっぱり殺伐としとるやんけ。

そんでまた兄が弟を殺すんか?

残念ながらそうはならない。

ヤコブはエサウの恨みを事前に知って、逃亡するんだ。

それは残念やったな。

て言うか、そんなん恨まれて当然やろ。

ヤコブは東方を旅し、レアとラケルの姉妹を妻とした。

レアとラケルの父、ラバンの元で働き、「まだらとぶちのヤギ全部」を報酬にするよう約束した。

すると神様は産まれるヤギを全て「まだらとぶち」にした。

ラバンの息子たちは怒った。

こいつ、ええかげんにせえよ。
ヤコブはどうにかラバンと不戦の条約を結んで逃げ切る。

でもその先に待ち構えていたのが400人の兵隊を連れたエサウだった。

進退きわまったな。

自業自得やで。

そこでヤコブが取った選択は全面降伏だった。
ヤコブは兄エサウに近づくまでに七度地にひれ伏した。

妻と子どもたちを「神があなた(エサウ)の僕(しもべ=ヤコブ)に恵んでくれた子たち」と言い。

ヤギ、羊、牛の群れを「わがあるじ(エサウ)のご好意にあずかるためです」と言い。

エサウが不要と言えば、エサウを「神の顔」と評し、とにかく受け取ってくれと懇願した。

すがすがしいまでの手のひら返し。
ヤコブは言った。

「子どもたちはか弱く、羊や牛の子の世話もしなければならなりません」

「わがあるじ(エサウ)は僕(しもべ=ヤコブ)より先にお進みください」

「(兵を残そうというエサウに)わがあるじのご好意にあずかれば十分です」

そしてヤコブはエサウから逃れてスコトの地に家を建てた。

……って、逃げるんかーい!
ヤコブは後に神様からイスラエルと呼ばれるようになる。

彼こそはユダヤ人の祖先なんだ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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