36.ユダ・イスカリオテ

エピソード文字数 1,592文字

イエスは弟子たちに仰せになった、

「二日の後には過越の祭りを迎える。人の子は引き渡され、十字架につけられる」。

その頃、祭司長や長老たちはカイアファという大祭司の官邸に集まった。

策略を用いて、イエスを捕らえ、殺そうと相談したが、

「祭りの間はいけない。民衆のうちに騒動が起こるかもしれない」と言っていた。

ついにイエス様殺害の策略が見え始めたな。

結果は分かっとっても腹立つわー。

過越の祭りは『出エジプト記』に由来するもの。

皆が神に救われ、エジプトから脱出したときを想起する時期ですわ。

そんな時に預言者を殺害などすれば、大騒ぎとなるは必定でしてよ。

イエスがシモンの家におられた時、一人の婦人が高価な香油をイエスの頭に注いだ。

弟子たちはそれを見て、香油を売れば貧しい人々に施すことができたと憤慨した。

イエスは婦人は自身の埋葬の準備をしてくれたと弁護し、婦人の行為を称えた。

その後、十二人の一人、イスカリオテのユダが祭司長を訪ね、

「あの男をあなた方に引き渡せば、いったい、いくらくれますか」と言った。

祭司長たちは銀貨三十枚を支払った。

その時から、ユダはイエスを引き渡す機会を窺っていた。

かの有名なイスカリオテのユダ。

彼が裏切ることはよく知られていますが、そもそも何故裏切ったのかは不明ですわね。

一般的な解釈について説明しておくと、まずは金銭目的だね。

『ヨハネによる福音書』では、ユダが金銭に貪欲である様子が記されている。

金入れを預かる立場であるにも関わらず、その中身をごまかし、盗んでいたとね。

金銭目的っちゅうのは古今東西分かりやすい動機や。

金のために働く奴の方が信用できる場合もあるしな。

せやけど、たった銀貨30枚でイエス様を売るなんてあるんやろか。

銀貨30枚て、そのへんの奴隷と同じ値段やで。

他には自己保身を動機とする説もあるね。

イエスが危機にあるということは、弟子たちの身も危ないということ。

先に裏切ることで、自分の身を守ろうとしたのさ。

危ないのはずっと前からのことかしら。

それがこの期に及んで保身に走るというのも不思議ですわね。

変わり種の説として、ユダが熱心党の隠れメンバーってのもあるね。

イエスを王にしてローマと戦おうとしたけれど、イエスの思想と合わなかった。

それで失望して殺したか、追い詰めて翻意させようとしたって話だ。

なんでもありやなあ。
そして舞台は「最後の晩餐」へと進む。
この絵に説明は不要かもね。

レオナルド・ダ・ヴィンチによる「最後の晩餐」だ。

ここでイエスは、弟子たちの一人が裏切ろうとしていると告げた。

皆は驚愕し、騒ぎとなった。

ユダさん、めっちゃ堂々と銀貨の詰まった袋握りしめとるやん。
ユダはイエスにこう言った。

「先生、まさかわたしではないでしょう」と。

するとイエスは「いや、そうだ」と返事した。

裏切りがとっくにバレていたのですか。

ならば、ユダの企みもここまでということかしら。

それが不思議なことに、この場でユダが咎められたりしない。

むしろマタイ以外の福音書で、イエスはユダの行為を進めるよう促す。

それはまるでユダの裏切りが神の計画の通りであるかのように。

言われた通りにやっとるなら、ユダの裏切りはなんちゃってやん。

でも、ユダ言うたらダンテの『神曲』で地獄落ちやからな。

やっぱり裏切った悪人てことなんやろか。

実は『聖書』に含まれず「異端」とされた福音書がある。

なんとその中には、ユダこそがイエスの真の理解者であるというものがある。

その名も『ユダの福音書』だ。

その内容についてはここでは控えよう。

非常に刺激的で、とても現代の教会では受け入れられないとだけ言っておく。

イエスはパンを取り、弟子たちに与えて仰せになった、

「取って食べなさい。これはわたしの体である」。

また杯を取り、彼らに与えて仰せになった、

「これは罪の赦しのために、多くの人のために流される、わたしの契約の血である」。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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