2.カナの婚宴

エピソード文字数 1,253文字

ガリラヤのカナで婚礼があり、イエスの母がそこにいた。

イエスも弟子たちもその婚礼に招かれていた。

ええなあ、結婚式か。

イエス様の前で結婚できるとか最高やないか。

まことに、まことに。
そんで、これは誰の結婚式なんや?
分からない。

聖書にはただ「婚礼」とだけ書かれていて、新郎も新婦も不明なんだ。

ただし、いちおう伝統的な解釈は存在する。

なんとこの婚礼は福音書を書いたヨハネ自身のものだという。

『神学大全』で知られるトマス・アクィナスらがそう語ったらしい。

イエスやその弟子たちを招くほどですものね。

名前が書かれていないのも、ヨハネ自身が新郎であれば分からなくもありません。

しかし名前が無いことで想像力をかきたてたんだろう。

現代の神学者、ジョン・シェルビー・スポングはイエス自身の婚礼ではないかと言う。

そしてその花嫁はマグダラのマリアだってね。

まーた、マグダラのマリアか。

ちょっと便利に使い過ぎちゃうか。

しかし過去にはもっとすごい解釈もある。

末日聖徒イエス・キリスト教会、通称モルモン教のオーソン・ハイド。

彼によればこれはイエスの婚礼である。

そして花嫁はマグダラのマリア、ベタニアのマリア、そしてその姉のマルタの三人だ。

あらあら、さすがはイエス・キリスト。

婚礼一つで三人もの女を救って差し上げるとは。

ここまで言ってしまえる根拠は何だろうね。

信じるのは自由だけれど。

誰の結婚式か、具体的な証拠はあらへん。

とりあえずは伝統に従ってヨハネの結婚式かもしれんくらいの見方でええんちゃうかな。

ぶどう酒がなくなりかけたので、母はイエスに、

「ぶどう酒がありません」と言った。

せっかくの楽しい婚礼だと言うのに、ぶどう酒が無くなってしまった。

アメリカのカトリック教会司教フルトン・J・シーンはマリアの恥になると考えた。

この婚礼はマリアの親族を招いたもので、ぶどう酒の枯渇はもてなしの不足ってことさ。

ぶどう酒が無い言うて、水とか出されても寂しいからなあ。

楽しい酔いも覚めてまう。

そこでイエスは奇跡を起こす。

これは『ヨハネによる福音書』に限らず、全てにおいて最初の奇跡だ。

イエスは水瓶いっぱいの水をぶどう酒に変えた。

死者を蘇らせるほどですもの。

水をぶどう酒に変える程度、たやすいこと。

世話役は花婿を呼んで、言った、

「誰でも初めに善いぶどう酒を出して、酔いの回ったころに、

質の劣ったものを出すものですが、あなたは善いぶどう酒を今まで取っておいたのですね」。

より善いぶどう酒が出される。

これは一般的にイエス・キリストが現れることの比喩だと解釈されている。

ルネッサンス期の画家パオロ・ヴェロネーゼによる「カナの結婚式」だ。

賑やかな構図はウォーリーを探せみたいな楽しさがあるね。

見ていて飽きないよ。

右下に猫ちゃんおるやん。

かわええ。

ぶどう酒の入った水瓶かしら。

猫に倒されやしないか、ひやひやものですわね。

ええんやで。

なんぼでも、イエス様が増やしてくださるからな。

このことを、イエスは最初の徴(しるし)としてガリラヤのカナで行い、

ご自分の栄光を現された。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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