2.汚れた動物たち

エピソード文字数 1,219文字

汚れた動物か。

そういや、イスラム教徒は豚食べたらあかんのやっけ。

実はユダヤ教徒にとっても豚肉はタブーなのさ。

最近は「ハラール」という言葉も知られてきたよね。

これはイスラム教で「合法」ということなんだけれど。

ユダヤ教では似たような意味で「コーシェル」と言うんだ。

腹をすかせて飢え死にしそうやってのに。

これは食べたらあかんとか、拷問やろ。

汚れた動物については色んな理由が考えられる。

よく言われるのは、豚を食べると食中毒になりやすい、とかかな。

でもこれはあくまで推測でしかない。

当のユダヤ教徒の大半は受け入れていない説だね。

豚が異教の祭式に用いられたからっていう説の方が強いかも。

説得力はあると思うけどな。

それゆえにたちが悪い、ってこともあるかもしれん。

動物のうちで、ひづめが割れて完全に分かれているもの、そして反芻するもの。

それら全てをお前たちは食べることができる。

らくだは反芻するが、ひづめが割れていないから汚れた動物である。

岩タヌキ、野ウサギも反芻するが、ひづめが割れていないので汚れた動物である。

豚はひづめが割れているが、反芻しないので汚れた動物である。

お前たちはこれらの肉を食べたり、死骸に触れたりしてはいけない。

らくだって砂漠の非常食ってイメージあるんやけどなあ。
豚と違って、イスラム教徒はらくだを食べることが許されているんだ。

そうでなければ、広い砂漠を生き残ることは出来なかったろうね。

逆にそれ以外の地域では、らくだは育てるのに時間のかかる、効率の悪い動物だったんだ。
そういうのが理由で汚れた動物に分類したんかもな。

タヌキとかウサギとかはなんやろ。

世界中で狩って食べてる動物やのに。

よく分からないよね。

タヌキやウサギは実のところ反芻する生き物じゃない。

でも、ひづめが割れていない動物でもあるから、やっぱり汚れていることになる。

水に棲む生き物のうち、ひれとうろこのあるものは全て食べることができる。

水中に群がるすべてのもののうち、ひれとうろこのないものは忌むべきである。

「群がるすべてのもの」ってどういう意味なん?
「群れをなすもの」全てってことかな。

集団で移動する昆虫、魚、小動物のことらしい。

そんで「ひれとうろこのないもの」って具体的には?
貝とかエビとかかな。

コーシェルに従うと日本人の食生活に大打撃だろうね。

モーセはん、牡蠣にでも当たったんやろかな。

そんで「これは悪魔の食いもんや!」とか言うたんかもしれん。

美味しいよね。牡蠣。
鳥のうちで次のものは忌むべきもので、食べてはならない。

ハゲワシ、ハゲタカ、トビ、ハヤブサ……そしてコウモリ。

鳥については具体的な名前を出して「食べちゃダメ」って言うんだ。

その最後にコウモリが出てくるのは、当時は鳥の一種と思われていたってことだね。

虫は全て忌むべきものである。

ただし、蝗(いなご)は食べても良い。

やっぱ蝗(いなご)食うとるやんけ。
栄養価が高く、農作物の被害を食い止める、一石二鳥なのさ。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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