1.神の霊感

エピソード文字数 1,160文字

『テモテへの第二の手紙』第3章16-17節

聖書はすべて、神の霊感によるもので、人を教え、戒め、

誤りを正し、義に導く訓練をするために有益です。

それによって、神の人は、あらゆる善い業を果たすことのできる、最適任者となるのです。

神の霊感……。

ギリシア語ではテオプニストス(theopneustos)とありますわね。

ラテン語のヴルガタ訳ではインスピラータ(inspirata)……。

英語で言う、インスピレーション(inspiration)とされております。

テオプニストスは神の(theo-)息吹(pneustos)合成語。

つまりインスピレーションとは天からのひらめき。

「ひらめき」は古くには雷の様子を表す言葉。

インスピレーションを「天来の妙想(みょうそう)」と訳すのも納得ですわね。

そしてラテン語動詞形のインスピラーレ(inspirare)は「内に吹く」の意味。

まさに神の息吹が心に吹き込まれるかのような表現ですのよ。

それほどの感覚、感動をもって書かれたんが聖書っちゅうことやで。

気ぃ引き締めて読まなあかんな。

もう随分と読み進めてしまったけどね。
それに、「聖書はすべて」と言うのはいわゆる旧約聖書全体のことらしい。

僕らはとっくに見終えてしまったのさ。

ええんやで。

何度でも読み返しても。

そのうちね。

ともあれ、『テモテへの第二の手紙』についてだ。

第一の手紙同様に、偽教師に対する警戒が書かれている。

「愚かで教養の無い議論」を避けろとも忠告している。

何を持って「愚か」で「教養の無い」と断じるのかしらね。

その理由が説明できない場合、「愚か」なのはパウロ自身かもしれませんわよ。

手紙では「愚か」な人たちは「悪魔に捕らえられ」ていると言っている。

ビヨンデッタのような言葉で言いくるめられた人たちってことかな。

お褒めにあずかり光栄ですわ。
そうやって偽教師を批判するパウロだけれど、死期が近づいていた。

ローマで裁判を受けることになって、弟子たちはパウロから離れて行ったんだ。

『テモテへの第二の手紙』第4章16節

わたしの最初の弁明の際には、誰もわたしの傍らに立つ者がなく、

みなわたしを置き去りにしました。

――どうか彼らにこの責めが負わされませんように。

小言の多い爺ですもの、嫌われていたのでは?
イエス様の時と同じや。

みんなやっぱり死ぬのは怖いねん。

それを誰も責めることなんかでけへん。

パウロも、その弟子たちも、いったいどういう心境だったのだろうね。

断腸の思いだったのかもしれない。

僕なんかはイエスになぞらえた創作じゃないかって疑ってしまうけど。

『テモテへの第二の手紙』第4章18節

主は、わたしをすべての悪い業(わざ)から救い出し、

無事に天の国に迎え入れられるまで、わたしを守ってくださるでしょう。

主に栄光が代々限りなくありますように。アーメン。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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