6.禁断の愛と復讐

エピソード文字数 1,002文字

ダビデは人妻を奪ってその夫を死に追いやった。

イスラエル王国ではさらなるスキャンダルが続く。

ダビデとマアカの間に生まれた王女タマルとその弟アブサロム。

そしてダビデとアヒノアムの子、アムノン。

アムノンが異母妹であるタマルに恋をしたことから悲劇が始まるんだ。
悲劇の恋。

なんと好奇をかき立てる響きでしょう。

草どもはいつもそれで右往左往するの。

思い出しますわ、わたくしに懸想したアルヴァーレ様のことを。

アムノンは病と偽り、異母妹のタマルに看病させるよう父ダビデに言った。

そして看病に現れたタマルにアムノンが迫って言った。

「妹よ、わたしと寝ておくれ」

タマルは拒んで返事した。

「いけません、お兄さま。愚かな振る舞いはなさらないで」

しかしアムノンは力ずくでタマルを辱めた。

殺すしかないな。
はい、お姉さま。

お任せあれ。

蠅の王が出てきたら大ごとだから、やめてねビヨンデッタ。
まんまとタマルを手篭めにしたアムノンだけど、今度は無性に彼女が憎くなった。

愛憎は表裏一体と言うけれど、激しい気性の持ち主だったんだろうね。

とんでもない、じこちゅーやな。

こんなんが王子でイスラエルは大丈夫なんか?

どうかな。

でもその心配はきっと杞憂に終わるよ。

タマルの弟アブサロムは復讐を決意した。

酒宴を開き、アムノンが酔ったところを従者に殺させた。

ダビデは嘆き、アブサロムは逃走した。

なんや、さくっと死んでもうたんか。

ビヨンデッタの出番あらへんかったな。

ダビデはアムノンの所業も知っていた。

取り立ててアブサロムを罰しようとは思わなかったみたいだ。

ダビデの腹心ヨアブが計らって、アブサロムが帰ってこれるようにした。

アブサロムはエルサレムに戻り、息子三人と娘一人をもうけた。

その娘の名は、タマルと言う。
自分の娘に、姉の名を与えた、ということ?
なんでそんなことしたんやろ。
アブサロムの娘タマルについては記述がほとんど無い。

だから真相については知りようがないんだ。

たまたま同じ名前だった、という可能性もある。

けれどここでそう判断するのは人情として難しい。

これはアブサロムが愛した姉のタマルを忘れないため。

そういった理由から付けた名前なんじゃないか……。

『ユダヤ聖書季刊誌(Jewish Bible Quarterly)』

ウィリアム・ローゼンブラムという人の記事にはそんな風に書かれていたね。

悲しくも切ない話やったな。
そのアブサロムは謀反を起こす。
なんでやねん。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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