15.ペトロの剣と聖ゲオルギオス

エピソード文字数 1,061文字

そしてまたイエス逮捕の場面だ。

『ヨハネによる福音書』ではユダは「一隊の兵士」を引き連れてきたと言う。

この「一隊の兵士」は新アメリカ標準訳聖書でコホルス(Cohort)と訳される。

コホルスはレギオンの10分の1で、600人程度だったね。

イエス様を捕らえるんやからな。

600人でも少ないんとちゃうか?

何せ万軍の主を父とする方ですものね。

何故にかその力を見せようとはしませんが。

さて、シモン・ペトロは剣を持っていたので、それを抜いて、

大祭司の僕に切りかかり、右の耳を切り落とした。

その僕は名をマルコスといった。

向こう見ずなことを……。

されど、600人の兵士を前にして物怖じしないのは見上げた態度ですわ。

その場で討ち死にしても良いという覚悟に思えます。

実はこの時、ペトロが使った剣だとされるものが残されている。

ポーランドの都市ポズナンの大司教区博物館(Poznań Archdiocesan Museum)。

実物はしまわれていて、レプリカを見ることが出来る。

左がレプリカで右が本物やな。

さすが、2000年前の剣は年季入ってんなあ。

ペトロの剣には面白い伝説がある。

ドラゴンスレイヤー(竜退治者)の聖ゲオルギオスがこの剣を手にしたという。

実は聖杯伝説に登場したアリマタヤのヨセフがブリテンに剣をもたらしたんだ。

剣の名はメリバー(Meribah)、ヘブライ語で「闘争」を意味する。

イエス様を守る剣やからな。

さぞ強力な武器になったやろ。

しかし、その博物館の剣とやらは本物ですの?

こうも錆び付いていては、真偽のほども知れているのではなくて?

歴史家たちは10世紀頃の模造剣だろうと考えていたらしい。

そうではなく1世紀のものという人もいれば、14世紀だという人もいる。

仮に1世紀だとしても、ペトロの持っていた剣かどうかは分からないだろうね。

このへんは伝説の剣が持つロマンってところかな。

面白い話ではありましたが、ペトロが剣をふるったところでどうにもなりません。

イエスは逮捕され、弟子たちは逃げ出した、と。

そんで、ペトロはイエス様を知らんと3回言うてまうんやな。

奮い立った勇気も、いっぺん命拾いしてまうと戻らへんのや。

その後大祭司アンナスによる尋問。

総督ピラトとの対話を経て、イエスに死刑が宣告される。

彼らは叫んだ、「殺せ、殺せ、十字架につけろ」。

ピラトは彼らに言った、「お前たちの王をわたしが十字架につけるのか」。

祭司長たちは答えた、「皇帝のほかに、われわれに王はいません」。

そこでピラトは、十字架につけさせるために、イエスを彼らに引き渡した。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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