1.パウロ書簡

エピソード文字数 1,132文字

新約聖書はまず四つの福音書で始まり、使徒言行録と続く。

イエスの誕生から死と復活、そしてその後の活動について書かれているわけだ。

歴史としての記録はここまでで、以降は手紙の形が続く。

手紙の数は21ある。

そしてその内の大半、13の手紙は伝統的にパウロによって書かれたと言われている。

それらをまとめて「パウロ書簡」と呼ぶんだ。

実は初期には14の手紙をパウロによるものとしていた。

『ヘブライ人への手紙』だ。

この手紙はそもそもパウロによるものとも書かれておらず、文体からして異なっている。

だから今では一部の学者を除いて、別の人物による手紙と考えられているのさ。

手紙か。

最近はメールとかSNSが主流やからな。

ハガキでさえめったに送ることあらへん。

その手紙は何のために送ったんやろ。

暑中見舞いとかなんかな。

暑中見舞いは日本の江戸時代に始まった文化らしいけどね。

果たしてこの時代、地中海沿岸にそんな文化があったかどうか。

手紙は主にキリスト教の教理について説く内容になっている。

パウロ書簡で最も重視されるのが『ローマの人々への手紙』だ。

ここでは救い、信仰、恵み、聖別といったことがまとめられている。

その13の手紙は本当に全てパウロが書いたのかしら。

パウロの名を騙った不埒者がいるのではなくって?

不埒者ってわけでもないだろうけどね。

ビヨンデッタの言う通り、パウロのものではないと考えられている手紙もある。

7つの書簡はパウロが書いたものだと言われている。

2つの書簡は判断が分かれるものだ。

そして残り4つの書簡は8割の学者が「偽典」的だと考えている。

■真筆性が高い

『ローマの人々への手紙』

『コリントの人々への第一の手紙』

『コリントの人々への第二の手紙』

『ガラテヤの人々への手紙』

『フィリピの人々への手紙』

『テサロニケの人々への第一の手紙』

『フィレモンへの手紙』


■判断が分かれる

『コロサイの人々への手紙』

『テサロニケの人々への第二の手紙』


■真筆性が低い

『エフェソの人々への手紙』

『テモテへの第一の手紙』

『テモテへの第二の手紙』

『テトスへの手紙』

また、時系列についても順番というわけではない。

一つ目が『ローマの人々への手紙』なのは、一番大きな都市だからさ。

まあ、そんな細かい話はここでは割愛しよう。

『ヘブライ人への手紙』は結局、誰が書いたもんなんやろ。
神学者アドルフ・フォン・ハルナックはプリスキラという女性ではないかと言う。

他にはバルバナ、ルカ、第4代ローマ教皇クレメンス1世とか、色々だ。

フランシスコ会聖書研究所によれば、最も可能性が高いのはアポロという人物らしい。

例のごとく、確定した答えはありませんのね。

まったく、しょうのないこと。

ちゅうわけで、次回からは手紙そのものを見て行くんやな。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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