6.真のキリスト者

エピソード文字数 1,354文字

単純に律法に従っていれば救われるということではない。

もちろん律法を蔑ろにするわけではないけれど、それよりも信仰こそ優先すべきだ。

そういうことで手紙の終盤は信仰について熱く語る。

具体的には、『創世記』以降に登場する有名な人物たちを例に挙げていく。

最初に例示されたのはカインとアベルの兄弟だ。

アダムとエバの息子たちで兄がカイン、弟がアベルだったね。

アベルはカインによって殺されたけれど、神からは正しい人とされた。

カインとアベルの話は存じていましてよ。

しかし、その話が信仰とどのように関わってくるのかしら。

アベルが神に認められたのは、その信仰ゆえだったのさ。

信仰とは「希望していることを保証」し、「見えないものを確信させる」ことなんだ。

……と言うのは『ヘブライ人への手紙』に書かれていることだけどね。

信じたからこそ救われたって話は確かにあるからなあ。

ノアの箱舟とか分かりやすいやん。

大洪水が起きるとか普通信じられへんやろ。

信じて、言われた通りに箱舟作ったから生き延びたんや。

『創世記』第6章17節

見よ、わたしは地上に洪水を起こし、命の息のある肉からなるものをすべて天の下から滅ぼす。

地にあるものはことごとく死に絶えるであろう。

アブラハムが息子のイサクを生贄に捧げようとしたのもそうだ。

『ヘブライ人への手紙』によれば、彼には息子が無事に済むという確信があった。

たとえ生贄として捧げても、神が復活させてくれるだろうとね。

その理由は『創世記』にある。

以下の文章は、イサクを生贄に捧げようとするよりも前のことだ。

『創世記』第21章12-13節

神はアブラハムに仰せになった、

「その子とお前のはしためのことで悩むな。サラがお前に言うことをみな聞き入れよ。

イサクから生まれる者が、お前の子孫と呼ばれるからである。

しかしわたしは、はしための子ももう一つの国民とする。彼もお前の子であるから」。

神が「イサクから生まれる者」と言い切っていますわね。

神がそう言ったのなら、それは絶対。

つまり、イサクが子供のまま死んでしまうなどありえないと考えられます。

なるほど。

イサクを捧げようとしたんは、ほんまに捧げようとしたんとちゃう。

最後には神様がなんとかしてくれるって信じとったからなんやな。

あくまで『ヘブライ人への手紙』によるとね。

僕は神が自分の言ったことを忘れてただけだと思うよ。

何せ、後にイスラエルのことさえ忘れちゃうんだから。

短気で怒りっぽいやつなのさ。

このような先人たちは信仰によって苦難を乗り越えてきた。

そしてその信仰の「完成者」となったのがイエス・キリストだ。

そのイエス・キリストにこそ倣えと言う。

『ヘブライ人への手紙』第13章15-16節

ですから、わたしたちは、イエスを通して、賛美の犠牲、すなわち、

み名をたたえる唇の実を、絶えず神にささげようではありませんか。

あなた方は慈善を行うことと、物を分け合うことを怠ってはなりません。

神がお喜びになるのは、このような犠牲です。

ちょっとええこと言うてるやん。

賛美が「唇の実」っちゅう捧げものになるんや。

神様も褒められたらやっぱ嬉しいんやろなあ。

もう羊なんかを焼いて捧げたりしない。

ましてや人を捧げて、神が喜ぶなんてのはあり得ない。

讃美歌は霊的な供物のようなもの、と言えるかもしれないね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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