2.イスラエルの罪と罰

エピソード文字数 1,162文字

人は誰と争ってもよいというものではない。

人は誰を責めてもよいというものではない。

祭司よ、わたしがお前と争うのだ。

神様が祭司に喧嘩ふっかけとるやんけ。
祭司は『申命記』でも明確に強い権力が与えられた存在だ。

けれどその祭司が神を敬わないなら、祭司も他の民と同等になる。

『申命記』第17章12節

もし、人があなたの髪、主の前に仕えて立つ祭司、

あるいは裁き手に従わず、不遜な振る舞いをするなら、

その者を死刑に処し、イスラエルのうちから悪を取り除かなければならない。

祭司の権力は「主の前に仕えて立」てばこそ。

その前提を失えばただの民となるのは道理。

あたらしいぶどう酒がわたしの民の心を奪う。

彼らは木にものを尋ね、自分の杖に伺いを立てる。

姦淫の霊が彼らを迷わせたからである。

彼らはその神のもとを去って姦淫を犯した。

あたらしいぶどう酒はバアルの祭儀、その象徴だと解されている。

いつもの偶像崇拝について語っているね。

エフライムは偶像の仲間である。

彼は酒飲み仲間とともに調子に乗っている。

彼らは姦淫に耽り、恥しらずという不名誉を喜んでいる。

エフライム?

それってヨセフの息子でエフライム族の始祖のことか?

言葉の語源としてはそうだろう。

ここでは北イスラエル王国のことを指す。

北イスラエル王国を構成する部族の代表にでもされたのかな。

イスラエルは偶像崇拝を行った。

そして外交を誤る。

神はエフライムを「だまされやすい鳩のよう」とまで虚仮にした。

エジプトやアッシリアの間を揺れ動く様を小ばかにしたのさ。

小国が大国に挟まれる苦労があるからな。

一概に馬鹿にはできへん。

尼子と大内に挟まれる毛利みたいなもんや。

その喩えならば、イスラエルは大国となるべきでしたわね。
毛利は戦国時代、西国の覇者だからね。

関ケ原の西軍大将にまでなるんだから、荒波をうまくかいくぐったと言える。

暁にイスラエルの王は消え去る。
聖書で何度も繰り返された話やな。

イスラエルは亡ぶ……。

しかしこの後、神は慈悲を示す。

イスラエルが「幼子(おさなご)」だった頃を思い出し、こう言うのさ。

「エフライムよ、どうしてお前を見放すことができようか」ってね。

あら。

それではエフライムは救済されると?

いや、やっぱりダメだった。

エフライムは救いの機会を逸してしまった、と聖書は語る。

(北イスラエルの首都)サマリアは咎の償いをさせられる。

自分の神に反逆したからである。

彼らは剣に倒れ、幼子は打ち殺され、身籠った女は腹を引き裂かれる。

期待させといて結局それか。

神様はいつもそうなんや。

『ホセア書』は締めにイスラエルの回心と赦しについて語る。

神に立ち返ることで、イスラエルを再興できると主張している。

知恵ある者はこの言葉を悟り、賢き者はこれを知れ。

主の道はまっすぐで、正しい者はこれを歩む。

しかし、罪人はこれにつまずく。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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