9.太陽と月、そして星たち

エピソード文字数 937文字

太陽や月について考える時、天動説と地動説があるよね。

そしてさほど遠くない時代、天動説が主流であったことも知られている。

現代の天文学において、大枠で異なることは少ないだろう。

けれど天動説と言ってもその考え方は様々だ。

何せことは信仰に関わることだからね。

というわけで、古代ユダヤが世界をどのように捉えていたか。

その図を作成してみた。

……。

なんやこれ。

なにやら世界をぐるりと囲んでいますわね。

大空の上、天の下に水がある?

ここでは太陽と月の動きだけではなく、雨のメカニズムも解説している。
実は空の上にはずっと水があって、たまに天蓋が開いて雨となるんだ。

世界は水によってぐるりと囲まれているのさ。

下の黒いやつは陰府(よみ)のことやな。

死んだらそんなとこに行ってまうんか。

そのさらに下は深淵ですわね。

もはや草どものはかり知るところではございません。

『創世記』の洪水。

さらに遡って『ギルガメシュ叙事詩』の洪水。

中東の人々は水に生活を脅かされてきた。

そうした不安が反映された世界観なのかもしれないね。
澄み渡る大空は天の高みの誇り。

天の装いは栄光に満ちた眺め。

太陽は現れ、上り行くとき高らかに言う、いと高き方の業(わざ)は何と驚くべきものか。

太陽が言うとんのか。
メソポタミアには太陽神シャマシュがいる。

聖書の神は唯一だけれど、人々に擬人化した太陽のイメージはあったんだろう。

月もまた、定められた時に出て、時を示す永遠の徴(しるし)となった。
当時、世界の暦は太陰暦中心。

すなわち月は時を刻む重要な目印となりましてよ。

太陰暦は太陽暦と違って、毎回毎回計算しなくちゃいけない。

だから暦を計算する専門家が必要だった。

日本で有名なのが陰陽師だね。

星は聖なる方の命令に従い、定められた位置につき、不寝番を怠ることがない。
『シラ書』ではその他、様々な自然現象について語る。

例えば虹は、いと高き方、神が引き絞って作ったと言う。

嵐だの大雪だの、色々生きるのに苦労も多いからな。

説明のつかへんことは怖いから、一所懸命に考えたんやろ。

まあ、うちは全部神様の仕業やて知っとるけどな。
誰が、主を見て、主を語ることができようか。

誰が、あるがままの主を崇めることができようか。

われわれは主の業(わざ)を垣間見たにすぎない。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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