3.ファリサイ派のニコデモ

文字数 1,386文字

ニコデモについては少し触れたね。

ユダヤ最高議会サンヘドリンのメンバーにして、イエスの理解者でもある。

ファリサイ派言うたら敵対者ってイメージ強いけどな。

ちゃんと話し合える人もおったんや。

ユダヤの歴史において、ニコデモ・ベン・グリオンという人物がいる。

この人物こそ、聖書に登場するニコデモのことではないかと考えられている。

ニコデモとは「人々の征服者」を意味し、ベン・グリオンは「グリオンの子」となる。

彼はローマとは協調路線で、熱心党のゼロテ派とは対立関係にあったという。

ある夜、ニコデモがイエスの所に来て対話をした。

イエスは仰せになった、

「人はアノーセン(上から or 新たに)生まれなければ、神の国を見ることはできない」。

ニコデモは言った、

「もう一度母の胎内に入って、生まれることができるのでしょうか」。

ギリシア語のアノーセンには色々と意味がありますわね。

「上から」「新たに」「内陸から」「北から」「はるか遠くから」

イエスは「神の国」と言っているのですから「上から」の解釈が正しいはず。

ニコデモは「新たに」の意味に勘違いしたのかしら。

そういう風に読めるけれど、実際には違うだろうと言われている。

これはあえて、不可能な可能性について語り、それを消去する話し方だと言う。

先に言っておくと、イエスとニコデモの会話は高い知識レベルにある。

単純にニコデモが物を知らず、イエスが教えるという風に捉えない方がいい。

イエスはお答えになった、

「人は水と霊によって生まれなければ、神の国に入ることはできない。

肉から生まれた者は肉であり、霊から生まれた者は霊である。

風は思いのままに吹き、あなたはそれがどこから来て、どこに行くか知らない。

霊から生まれた者もみな、それと同じである」。

なんや、小難しい話になってきよったな。

人は皆、肉から生まれたもんやろ?

霊から生まれたらもう人やのうて天使かなんかやで。

正直、僕もどこまで理解出来ているか……。

人が霊から生まれるというのは、端的に言ってキリスト教徒になるということだ。

霊は人間の領域において働く神的命と力との原理を表すのだとか。

言っててさっぱりだけどね。

その辺り「分かっている」などと言う者は信用なりません。

しかし「分からない」といって殊更に難しく見せる者も信用なりません。

つまり、どなたも信用いたしません。

話題にした瞬間、アウトやないか。
ニコデモはイエスに「どうして、そのようなことがありえましょうか」と言った。

するとイエスは若干皮肉っぽく、「教師なのに分からないのか」と言って説明する。

ここでも、ニコデモは道化を演じたと?
道化と言うほどのことはない。

ただ、ニコデモ自身、半信半疑なところはあったのかもしれないね。

人が霊的に生まれる、つまりイエスを信じることについて。

だから疑問形で尋ねてしまい、イエスは皮肉めかせて答えたんだろう。

モーセが荒れ野で蛇を上げたように、人の子も上げられなければならない。
『民数記』第20章8-9節

主はモーセに告げられた、

「火の蛇を造り、それを旗竿の上に掛けよ。

咬まれた者はみな、それを仰ぎ見れば、生きる。

モーセは青銅の蛇を造り、それを旗竿の上に掛けた。

蛇に咬まれた者は誰でも、その青銅の蛇を仰ぎ見ると生きた。

イエス様はこの青銅の蛇と同じや。

十字架刑にされることで全ての人の救いになる。

そういうことを、言っとるんやろな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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