6.ギブオンの降伏

エピソード文字数 870文字

イスラエル人の侵略を知り、周辺諸国の王たちは警戒を強めた。

ヘト人、アモリ人、カナン人、ヒビ人、エブス人の王たちは一致団結した。

そらそうやな。

こんだけご近所で好き勝手されとったら、誰かて警戒するわ。

むしろ、まだ力の付いとらん内に叩くべきやった。

まあ、結果論なんやけど。

小国がバラバラに存在している時代。

情報伝達も今とは比べ物にならないくらい遅かったろうね。

そんな中、彼らとは別の動きをする国があった。
ギブオンの民は遠い異国の民を装い、ヨシュアに接近した。

彼らはイスラエルの僕(しもべ)となることを誓い、ヨシュアはそれを受け入れた。

ギブオンは前回破壊されたアイの近くの町やな。

なんで遠い国の住人やなんて嘘言うたんやろ。

もし近くの住人と知れたら、イスラエル人に略奪されると恐れたのさ。

実際、聖書の中でイスラエル人たちは不服申し立てをしている。

ギブオンの民と契約を結んでしまったため、イスラエル人は彼らを攻撃しなかった。

しかしイスラエル人共同体は指導者たちに不平を言った。

略奪しとうてたまらんかったんやな。

血に飢えとるなあ。

主人は戦う戦士たちに褒美をやらなくちゃいけない。

でもお金も何も潤沢にあるわけじゃない。

だから褒美は、略奪品でまかなわれる。

古今東西どこでもそうさ。

日本でだって戦国時代に「乱妨取り」略して「乱取り」が行われている。

それ目当てに戦う奴もおるやろな。
そんなだから、ギブオンの策略は機先を制するものだった。

ヨシュアもイスラエルの民をなだめつつ、ギブオン人に文句を言う。

ギブオン人はカナン人でもありながら、イスラエル人と共存することになった。

これ自体は歴史的事実として、聖書ではそのいきさつを語っているのさ。

エルサレムの王、アドニ・ツェデクは4人の王たちに使いを送った。

彼らは結束し、ギブオンに向かって陣を敷いた。

地図で見てもエルサレムからギブオンは目と鼻の先。

早いうちに奪還なりせんと危険やと思たんやろな。

アドニ・ツェデクの「ツェデク」はエルサレム王の称号と言われている。

その名はウガリット神話におけるカナンの神ツェデクに由来する。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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