8.エリフ

エピソード文字数 896文字

3人の友人たちはヨブが自身の考えを変えないのを見て黙った。

そこで、年少であるために遠慮して黙っていたエリフが意見をし始めた。

なんやこいつ。

こんな奴がおったんか。

ラム族のブズ人バラクエルの子エリフ、と言う。

アブラハムの系譜に連なる血筋の人物だ。

このエリフという人物は謎めいている。

『ヨブ記』の途中で現れたけれど、終わりには気配すらない。

ふむ……。

では、後世の後付けではないかしら。

そういう話もあるらしい。

でもそれとは違って、エリフこそ『ヨブ記』の著者ではないかという説もある。

19世紀の神学者、アルバート・バーンズなんかはそう言っているね。

いずれにせよ答えは出ていない。

このエリフという若者もまた、ヨブの友人たちと同じように説教を始めるのさ。

エリフはヨブに言った。

あなたは神があなたを敵とみなし、歩む道を見張ると言うが正しくない。

何故なら、神は人間より大いなる方だからです。

眠たくなりますわね。

これも同じことの繰り返しですわ。

結局のところこいつらが言うとるんは一つだけや。

神様が正しゅうて、ヨブは間違うとる。

そんだけのことやってな。

ヨブは反論して言った。

神に悔い改めたとして、神があなたの思い通りに報われるだろうか。

因果応報の思想では、神に正しい態度で臨めば相応の利益が得られる。

しかしヨブはご覧の有様だ。

どれほど正しく信仰を持っていても、その人物をどうするかは神が決める。

それはそうでしょう。

あの気まぐれの権化を草ごときがコントロール出来るなど、ありえませんわ。

エリフはヨブに言った。

わたしたちはシャッダイ(全能者)に達することはありません。

神は公正に秀で、正義に富む故に人は畏れ敬うのです。

神は心のこざかしい者を顧みることは決してありません。

ここまで長々と難しいことを語るんだけどね。

要するに神はすごい、神は正しいということを言い募るばかりだ。

正直、疲れてきたわ。

いつまでこの不毛なやり取り続ける気なん?

疲れさせ、正常な思考力を奪う……。

色んな場面で使える手法ですわね。

友人たちやエリフに散々説教されたヨブだけど、彼はずっと自身の正しさを信じた。

するとついに神が現れ、ヨブに語りかけてきた。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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