1.炎のランナー

文字数 1,039文字

1981年公開のイギリス映画『炎のランナー』

第54回アカデミー賞作品賞受賞作品だ。

ヴァンゲリスが作曲したテーマ曲「タイトルズ」は誰もが一度は耳にしてるだろう。

『炎のランナー』オープニングラインは『シラ書』の一節が引用された。

『シラ書』第44章1節

"Let us now praise famous men, and our fathers that begat us."

さあ、われわれは誉れ高き人々と代々の先祖たちをたたえよう。
『炎のランナー』

名作中の名作や。

2012年のロンドンオリンピック開会式見たで。

『炎のランナー』をベースにしたパフォーマンスやっとったわ。

ローワン・アトキンソン……

と言うか、ミスター・ビーンですわね。

彼が出ているだけで物語がどう転ぶか容易に想像できましょう。

それほどにポピュラーなキャラクターがいるというのは強みですわね。

英国、あなどりがたし。

『炎のランナー』の原題は『Chariots of Fire』

そのまま訳せば『炎の戦車』となる。

古代のオリンピックでは戦車競走が競技に取り入れられていた。

これは戦車競技を再現したところだね。
かっこええやん。

うちもオリンピック出ようかなあ。

さすがに現代のオリンピックに戦車競走は含まれていないよ。

と言うか、ミカちゃんは男と女、どっちの名目で出場するのさ。

そら、戦いに際しては男やで。
ならばわたくしも男となり、「お兄様」とお呼びしますわ。
オリンピックは置いといて、『シラ書』について見ていこう。

『シラ書』は映画で引用されたりもするけれど、ユダヤ教では外典扱い。

キリスト教プロテスタント諸派においても外典だね。

カトリック教会と正教会においては正典に含まれているんだ。

著者はシラの子イエスス。

『シラ書』は『ベン・シラ(シラの子)の書』とも呼ばれている。

原文はヘブライ語だけれど、イエススの孫がギリシア語に訳したと序文に書かれている。

なるほど。

ほんで、『シラ書』ってのはどういう話なんや?

ざっくり言えば、イエススのブログかな。
ざっくりし過ぎでは?
基本的にはまた知恵に関する書物ではある。

ただ、イエススという著者がはっきりしている。

読めば彼の価値観が滲み出ているような気がするよ。

テーマは大きく10種類。

創造、死、友情、幸福、名誉と恥辱、金銭問題、罪、社会正義、演説、女性。

これらについて著者の考えが綴られているのさ。

『聖書』読め言われたらしり込みするやろけど。

ブログ読めやったら、まあちょっと見てみるかってなりそうやな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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