2.高利貸し

文字数 1,317文字

これ観たわ。

シェイクスピアの『ヴェニスの商人』やろ?

2004年に公開された映画だね。

監督はマイケル・ラドフォード。

主役のシャイロックを演じたのはアル・パチーノだ。

あら?

主役はシャイロックではなく、貿易商人のアントーニオではなくって?

原作の『ヴェニスの商人』ではそうだね。

シャイロックは悪役として描かれる。

この映画では趣向を変えて、シャイロックを主役にしたんだ。

劇中でシャイロックは悪徳高利貸しとして描かれる。

彼はまさに世界一有名な高利貸しと言ってもいい存在だね。

ほんで?

その悪徳高利貸しがどないかしたんか?

ユダヤ人には高利貸しのイメージが強い。

けれど、実は旧約聖書においては高利貸しは「不正」とされているんだ。

飢饉を乗り切るために財産を抵当に入れて借金しなければならない。

王の税金を払うために息子や娘を奴隷として渡さなければならない。

このような訴えを聞き、ネヘミヤは大集会を開催した。

ネヘミヤは有力者や役人に、兄弟を売ろうとしていると非難した。

神を畏れ歩み、負債を帳消しにすべきだと語った。

全会衆は賛同し、「アーメン」と言って主を賛美した。

借金背負って一家離散とか、今でもある話やしな。
せやけど、金利取ったらあかんのやったら、シャイロックはどうなるんや?

ユダヤ教徒失格になってまうやないか。

そこには別の論理が働いている。

ユダヤ教徒以外からなら金利を取っても良いことになっているんだ。

都合のよろしいルールですこと。

それも旧約聖書にあるのかしら?

これについては旧約聖書のどこにも書かれていない。

ユダヤ法の書かれた聖典タルムード(Mishnah Bava Metzia 5:6)に記されている。

当たり前だけれどタルムードはユダヤ教徒にとっての聖典だ。

しかしキリスト教徒にとっては聖典に含まれないんだ。

せやけどキリスト教徒にとって旧約聖書は聖典や。

金利を取ることはそこで非難されとる。

実際のところ商業の発達した都市で金利無しに金貸すやつなんかおらへん。

そうすると自然、キリスト教徒はユダヤ教徒から金を借りることになる。

そういうことだね。

だからこそ「シャイロックの悲劇」は生まれたのさ。

簡単なあらすじを教えてくださる?

わたくし、内容をすっかり忘れてしまいまして。

ざっくりとね。

アントーニオは自分の心臓を担保にシャイロックから金を借りる。

けれど金を返すあてが無くなってしまって、裁判沙汰になった。

判決は「心臓を取り出して良い」けれど「血の一滴も取るな」という無茶なものだった。

そして畳み掛けるようにシャイロックに市民の命を脅かした罪を着せる。

心優しいキリスト教徒は、彼を死刑にはせず、キリスト教に改宗させたとさ。

なんとお優しいこと!

これはご婦人方が感動して涙するのも納得ですわね!

なぜユダヤ人が金融に強いのか。

それはそこにしか生きる道が無かったからだ。

そして金融は専門的な知識を必要とする世界だ。

しかし勉強せず、楽して儲けようという連中が文句ばかり言う世界さ。

ネヘミヤ自身は城壁工事に専念し、土地を買いあさりはしなかった。

彼の部下たちもみな、工事のために集まっていた。

「わたしの神よ、わたしがこの民にしたことをすべて覚えて、恵みをお与えください」

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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