1.ソロモン神殿(第一神殿)

エピソード文字数 1,128文字

神の命により、ソロモンは神殿を造ることになったという。

けれどその実在を示す証拠は何も無い。

神殿について語るのは聖書のみなんだ。

それはちょっと意外やな。

それこそ穴掘ったら色々出てくるんちゃうか?

日本の古墳と同じだよ。

そこには宗教的、政治的に敏感な部分が絡んでくる。

おいそれと穴を掘り返すことなんか出来ないのさ。

実は無かった、となればがっかりですものね。

ただ、無いことを確定させるのは「悪魔の証明」ですわ。

それが出来るとしたら、わたくしかサタニャエルくらいでしょう。
いやあ……

ちょっと、難しいにゃあ。

『A History of All Nations from the Earliest Times』

和訳すると、「古代諸国家の歴史」といったところかな。

1905年、アメリカの教育学者ジョン・ヘンリー・ライトによって書かれた本だよ。

上の方に「TEMPLE」とあるね。

日本人はこれをお寺と訳しがちだけど、これが神殿のことさ。

ソロモン神殿は英語でSolomon's Templeとなる。

そしてこちらが設計図。

GNU Free Documentation Licenseによって無断複製が認められている。

とても有り難い図面だよ。

設計図下の一番左にある「Holy of Holies」ってのは何のことや?
日本語では至聖所というね。

神殿一番奥の部屋のことで、特に神聖な場所だ。

窓は無く、神の住む場所と考えられた。

右にある変な輪は何かしら?

Brazen Seaと書かれていましてよ。

Brazen SeaまたはMolten Seaという。

日本語では鋳物の「海」と呼ぶね。

この「海」は祭司が身を清めるための場所なんだ。

水溜めに使うんやな。

掃除の時とかめっちゃ大変そうやけど。

画像は1906年にアメリカで発行された「ユダヤ百科事典」のものだよ。

東西南北を3頭ずつ牛が外向きに並んで、その上にあるのが「海」だ。

そしてその周囲に洗盤(せんばん)が置かれていて、そこで捧げ物をすすぐのさ。
神殿が完成した後、祭司たちは神の櫃を至聖所へと運び入れた。

櫃の中にはモーセが入れた2枚の板以外は何も無い。

ラッパの吹奏者と歌唱者は一致して主を賛美し、褒め称えた。

かくして神殿は完成した。

神はソロモンの前に現れ、常に自分だけを信じるように念押しする。

仮にそうしなかったら、人々は土地を追われ、神殿も荒れ果てると言ってね。

実際にそうなった過去を知るうちらとしては、なんとも言えん忠告やな。

『歴代誌』を書いた人ら、読んだ人らはどんな気持ちやったんやろ。

見方によっては『歴代誌』は歴史の改ざんに近いかもしれん。

せやけどうちは、筆者の祈りのようなもんを感じてまう。

今はすでに破壊された神殿への思いも込めてな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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