4.セラフィム

文字数 1,170文字

ウジヤ王が死んだ年に、わたしは高く上げられた玉座に座しておられる主を見た。

その衣の裾は、神殿いっぱいに広がっていた。

そばにはセラフィムが仕えていた。

各々が六つの翼を持ち、二つは顔を覆うため、二つは足を覆うため、

二つは飛ぶためのものであった。

互いに呼び交わし、言った。

「聖なる、聖なる、聖なる、万軍の主。その栄光は全地に満つ」。
ウジヤ王は列王記に登場するユダの国王、別の名をアザルヤと言った。

その彼が死んだ年にわたし、つまりイザヤは神を見たと言う。

そして神のそばにはセラフィムが仕えていたらしい。
セラフィムは熾天使(してんし)って日本語では言われとるな。

単数形でセラフ、複数形でセラフィムや。

うちは大天使やけど、たまにこの熾天使にもなるんやで。
天軍も組織変更や配置換えなど、まるで企業のようですわね。

そもそも天使の階級はどのようになっていたかしら。

一般的に知られているのはキリスト教における階級だろうね。

だいたいこんな感じかな。

1.熾天使(セラフィム)

2.智天使(ケルビム)

3.座天使(ソロネ、オファニム)

4.主天使(ドミニオン、キュリオテス)

5.力天使(ヴァーチャー、デュナミス)

6.能天使(パワーズ、エクスシーアイ)

7.権天使(プリンシパリティーズ、アルヒャイ)

8.大天使(アークエンジェル)

9.天使(エンジェル)

ユダヤ教においてはまた別の解釈がある。

モーシェ・ベン=マイモーンという12世紀スペインのラビによると以下のようになる。

日本語訳は一部僕の解釈によることを断っておこう。

1.戦車(メルカバー,Chayot Ha Kodesh):メタトロンが率いる

2.車輪(オファニム,Ophanim)

3.勇士(エレリム,Erelim)

4.電流(ハシュマリム,Hashmallim):「琥珀」とも。

5.火炎(セラフィム,Seraphim):「燃えているもの」の意味

6.天使(マラキム,Malakim):伝達の役目

7.神々(エロヒム,Elohim):唯一神ではない他の神を指す

8.神々の子ら(ベネ・エロヒム,Bene Elohim)

9.楽園の守護者(ケルビム,Cherubim)

10.人に似た者(イシム,Ishim):サンダルフォン(又はメタトロン)が統治する

随分と趣が異なりますわね。

メタトロンと言えば、預言者エノクのことでしたかしら。

サンダルフォンは……。

預言者エリヤではないかと言われるね。
ユダヤ教の場合、人によっては違う並びを主張している。

いずれにせよ、キリスト教のものとは大きく異なっているよ。

主はイザヤに対して語り掛ける。

町は荒れ果て、国が崩壊するけれど、最後に切り株が残ると。

その切り株こそが聖なる種族、つまりバビロン捕囚後のイスラエル人さ。

なるほど。

もう滅びの預言が与えられてもうたんやな。

国は亡ぶ。

せやけど人は残るっちゅうことか。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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