1.「黙示録」とは

文字数 1,017文字

もく‐し【黙示】の意味(出典:デジタル大辞泉(小学館))

[名](スル)《「もくじ」とも》

1 暗黙のうちに意思や考えを表すこと。「黙示の意思表示」

2 隠された真理を示すこと。特に、キリスト教で、神が人意を越えた真理や神意などを示すこと。啓示。

黙示とは、ギリシア語のアポカリュプシス(apocalypsis)

「隠されていたものが明らかにされる」という意味の言葉ですわ。

アポ(apo-)「離れて」とカルプト(kalupto)「覆う」の組み合わせですのよ。

アポには他に「~の結果」「~の故に」といった意味もありますわね。

「黙示」は聞き慣れませんが、例えば法の世界などでも使われます。

文書などで明言しておらずとも、長期に渡って黙認していた場合。

それを「黙示の承諾」などと表現したりいたします。

聖書で「黙示」言うたら、それはすなわち『ヨハネの黙示録』のことやな。

他に書名で『黙示録』はあらへんし。

そんで『ヨハネの黙示録』は「隠された真理を示す」書物っちゅうわけや。

黙示を記録した書物のことを「黙示文学」と言う。

キリスト教に限らず、ユダヤ、イスラムにおいてもそうした世界観が描かれている。

以前見た、『イザヤ書』の一部にも黙示文学が含まれていたね。

『黙示録』というタイトルは、文書の表題からの引用になっている。

アポカリュプシス・イエスース・クリストス(Apokalypsis Iēsou Christou)

「イエス・キリストの黙示」と書かれている。

そしてこれも真偽は定かではないけれど、著者はヨハネとされている。

それゆえ『ヨハネの黙示録』と呼ばれている、というわけさ。

そんで、この『黙示録』では何を明らかにしてくれるんや?
「秘められた真理」「神の神秘」

より具体的には救世主、メシアの来臨を明らかにするのさ。

それは『テサロニケの人々への第二の手紙』に書かれていたようなことだ。

『テサロニケの人々への第二の手紙』第1章6-7節

主イエスが、ご自分の力強い使いたちを従え、燃え盛る炎に包まれて天から出現されるとき、

あなた方を苦しめている人々には苦しみを、苦しめられているあなた方には、

わたしたちとともに、報いとして安らぎを与えることは、神にとって正しいことです。

『ヨハネの黙示録』では、このイエスの来臨を詳しく説明してくれるのかしら。

「燃え盛る炎」だの、「苦しめている人々には苦しみを」与えようなどと。

穏やかならぬ様子ですわね。

ついにこの時が来たんやな……。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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