6.諸国民への託宣

エピソード文字数 1,285文字

諸国民への「託宣」とあるけれど、これはフランシスコ会聖書研究所による。

これがJLB(Japanese Living Bible)によれば「預言」となる。

いずれにせよ、神が伝える言葉という程度の意味だね。

ヘブライ語では「massa」と言う。

これを日本語に訳すと「負担」になる。

また、欽定訳聖書では英語の「burden」で「重荷」という意味だ。

なるほど。

これから色んな国に託宣を下すけど、けっこう重い話やでってことか。

その通り、まず神はバビロンに対して託宣を下す。
見よ、彼ら(バビロン)に対してわたしはメディア人を奮い立たせる。

その弓は若者たちを打ち倒す。

ペルシアによって滅ぶとしても、バビロニアは帝国を築くのではなかったかしら。

それがメディアによって打ち倒されるとは。

事情が複雑でね。

紀元前710年頃、まだ新アッシリア帝国がバビロニアを支配していた時代。

バビロニアのメロダク・バルアダン2世は反乱を繰り返していた。

そんな時、メディアはアッシリアに協力して、彼を王位から追い落としたのさ。

新バビロニア(カルデア王国)を築くまでに、紆余曲折あったわけだ。

わたしの地でアッシリアを打ち破り、

わたしの山々の上で彼を踏みにじる。

バビロニアの次はアッシリアか。
時代的に、アッシリア王サルゴン2世を想定していると思う。

彼はメロダク・バルアダン2世をバビロニアから追放した人物だ。

その後、アナトリア地方への遠征中に死んでしまった。

まことに、一夜のうちにアルは荒らされ、モアブは滅ぼされた。

まことに、一夜のうちにキルは荒らさて、モアブは滅ぼされた。

モアブと言えば、「メシャ碑文」にも書かれた国ですわね。

ユダ王国にしてみれば、ざまを見ろというところかしら。

実はそんなこともない。

『イザヤ書』第15章5節においてイザヤがモアブのために泣く場面がある。

モアブの窮地は決してイスラエルの民にとって喜ばしいことでもない。

モアブは『創世記』に登場するロトと、その長女との間に生まれた子の名前だ。

神話的世界の話ではあるけれど、遠い祖先としての繋がりを感じていたのかも。

ユダ王国とモアブの関係性は一言では言い表せないものなのさ。

見よ、ダマスコは、もはや町ではなくなり、瓦礫の山となる。

エフライムからは城壁のある町が、ダマスコからは王権が消え失せる。

ダマスコはダマスカスのことで、アラムの首都やな。

エフライムってのはどこのことやったやろ。

エフライムは元々、イスラエル12支族の1部族だね。

ただしここでは北部イスラエル王国を指す。

イスラエル王国は紀元前722年、サルゴン2世によって滅ぼされた。

見よ、主は速い雲に乗ってエジプトに来られる。

主の前にエジプトの偶像はおののき、エジプト人の心は挫ける。

筋斗雲かな?
ここではエジプトに頼ろうとしても無意味だと批判が綴られている。

イスラエル王国最後の王ホシェアはエジプトと密かに通じようとした。

それが露見して、アッシリア王に捕らえられてしまう。

あれやこれやとありましたが。

つまりこの「託宣」において、多くの国が荒廃したと描かれていますのね。

……まるで何か、前触れのよう。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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