9.兄弟愛

エピソード文字数 944文字

「隣人を自分のように愛しなさい」

これこそ、律法を完全に果たすものだとパウロは説く。

愛は隣人に悪を行わないからだ。

隣人を愛するということについて、パウロは次のように語った。
信仰の弱い人を受け入れなさい。

その考えを批判してはなりません。

ある人は何を食べても良いと信じていますが、弱い人は野菜だけを食べています。

食べる人は食べない人を侮ってはいけません。

また、食べない人も食べる人を裁いてはいけません。

神がその人をも受け入れられたからです。

ここで言う野菜だけを食べる者とは、ユダヤ人のことですわね。

ユダヤ教においてはコーシェルという規定が食材に適用されます。

ローマのような外国では、それにかなった物を見つけることが問題となりましょう。

『ダニエル記』で似たような話があったな。

バビロン捕囚時代で、律法を守るために食事制限する場面やったわ。

『ダニエル記』第1章12節

「どうか十日間、僕(しもべ)どもを試してください。

どうか、食べ物には野菜を、飲み物には水だけをお与えください。

律法を厳しく守る人は、パウロたちキリスト教徒にとっては折れた枝だ。

するとそこにはある種の優越が生まれる。

しかし、だからと言ってユダヤ人を侮ったりしてはいけないと言う。

したがって、もはや互いに裁き合わないようにしましょう。

そのもの自体汚れたものは何一つありません。

人が何かを汚れていると考えるなら、それはその人にとって汚れたものなのです。

ええことやで。

例えばインド国内のヒンドゥー教徒は牛を食べへん。

せやけど、同じインド人でもイスラム教徒は牛を食べとる。

まあ、そのせいで起こるいざこざもあるみたいやけどな。

基本的にはうちはうち、よそはよその精神やで。

しかし、他人の食生活に文句を言うキリスト教徒は世界中にいましてよ。

信仰心が欠けているのではないかしら。

文句を言うだけならまだしも、過激な行為に及ぶ人たちもいるね。

他人の食生活に対して暴力を行使するなんて、もはや狂信だよ。

パウロはあくまで自身の信仰、何を食べるべきという確信を大事にするよう言った。

それによって他者を貶めるようなことは、兄弟愛にもとると言えるね。

あなたは、持っている確信を、自分自身のために神の前にもち続けなさい。

確信に基づいていないことはすべて、罪なのです。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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