1.敵対者サタン

エピソード文字数 811文字

ウツの地に、ヨブという名の男がいた。

彼は非の打ち所がなく正しく、神を畏れ、悪を遠ざけていた。

彼は東の人々の中で一番の富豪であった。

ウツは古代エドム王国と同一視されることがあるらしい。

上の図で、薄暗い色になっているところがそのだいたいの領域だ。

そしてそこにはヨブという男性が暮らしていた。

彼はとても裕福な人物だと言う。

ヨブ(job)

その名の意味は「迫害」「嫌悪」

なんとも穏やかではありませんわね。

仕事(job)が「迫害」か。

なんかしっくりくるなあ。

たぶん関係ないと思うよ。

英語のjobは古くはjobbeだったみたいだし。

それ以上の語源はちょっと分からないけど。

なんや。

そら残念。

ある日、主の前に神の子らが来て、サタンもそこに混じっていた。

主がサタンに「お前はどこから来たのか」と問うた。

サタンは「方々を巡り歩いて参りました」と答えた。

神の子らというのは天使たちのことだね。
うちの友達おるかな?
ほんで。

サタンはサタニャエルくんのことなんか?

さて、どうだろうね。

サタンとは「敵対者」もしくは「告発者」を意味する言葉だよ。

僕自身は誰かに敵対したり、誰かを告発したりしてはいないつもりだけどね。

……。
ここでサタンは神に問いかけるんだ。

神はヨブを賞賛するけれど、それは単にヨブが裕福だからではないかと。

神に祝福されていなければ信仰も薄れるだろうと言った。

信仰の難しいところや。

結局、今の自分に利益が無いと続けられへんかったりする。

現世利益(げんぜりやく)ですわね。

これは仏教の言葉ですが、まあ現代語としても通用するでしょう。

サタンは言った。

「ヨブの持ち物全てを奪い去ってごらんなさい」

「彼はきっと主を呪うでしょう」

主はサタンに仰せになった。

「では彼の体以外、全ての持ち物をお前の手に任せよう」

人を不幸に突き落として信仰心を試そうてか。

最近忘れとったけど、やっぱ神様はえぐいなあ。

ここから「迫害」の名に相応しい、ヨブの苦難が始まるのさ。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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