1.ヤズディ教(天使教)

エピソード文字数 1,267文字

「エホバの証人」というキリスト教系の新興宗教がある。

カトリック教会からは「異教」認定されているところだ。

色んな宗派があるから「プロテスタント」じゃないのかって思うかもしれない。

けれど、プロテスタントは基本的に聖書を逸脱しない。

エホバの証人はそれをやってのけているわけだ。

読者の質問

「み使いの頭ミカエルとはイエスのことですか」

回答

「簡単に言えば,そうです」

あら、お姉さまったら。

実はイエスでしたの?

知らんかった。
さすがにイエスがミカエルというアイディアはユニークだけれど。

天使を崇拝すること自体は昔から行われてきた。

もっとも、それは「異端」とされる行いでもあるんだ。

コロサイは小アジア(アナトリア)にあった商業の町だ。

実はそこでも天使崇拝が盛んだったらしい。

商業的に発展した場所にありがちですわね。

様々な物と一緒に、色々な信仰も流れ込んでくるのです。

その通り。

かの町ではユダヤ教、グノーシス主義、その他多神教の教えが混じりあっていた。

そしてコロサイにおいては大天使ミカエルが崇拝の対象となっていたんだ。

地の狭間から癒やしの泉を湧きあがらせてくれるらしいよ。

うちにそんな力があったんか。

さすがやな、大天使ミカエル。

『コロサイの人々への手紙』は異端反駁の手紙というわけだ。

パウロにとっては残念なことに、小アジアは現代ではイスラムの地になっているけどね。

天使崇拝自体はどうなったんやろ。

今はもう全部イスラム教になってもうたんかな。

実はそんなことはない。

現代においても天使崇拝は残っている。

ヤズディ教(ヤズィーディー)という民族宗教がある。

これはよくテレビでも話題になる、イラク北部のクルド人たちの民族宗教だ。

アイユーブ朝のサラディンも確かクルド人出身者でしたわね。

彼自身はイスラム教スンナ派の人でしたけれど。

ヤズディ教にはメソポタミア神話の影響が色濃く残っている。

彼らは七大天使を崇拝し、その中の中心となるのがマラク・ターウース。

孔雀天使だ。

かわええやん。

ちょっとすまし顔の鳥さんて感じで。

だけどこの天使はキリスト教やイスラム教にすれば堕天使となる。

彼らにとってヤズディ教徒は悪魔崇拝者ということだ。

ただ天使を信仰の対象とするのでも異端扱いですのに。

それが悪魔ともなれば、異端中の異端ですわね。

マラク・ターウースはメソポタミア神話のタンムーズ(ドゥムジ)と同一視される。

タンムーズはイシュタルの夫だよ。

メソポタミア神話って「古代」ってイメージあるけど。

まだまだ現代に息づくものなんやな。

『コロサイの人々への手紙』第2章18-19節

ことさらに自分を卑下して、み使いを礼拝しなければならないとする者の誰からも、

あなた方は報いにふさわしくないとされるいわれはありません。

そういう人は幻に見たことにうつつを抜かし、

肉に基づいた考えによっていたずらに思い上がっており、

頭(かしら)にしっかり結びついていません。

体全体は、この頭のお陰で、互いの触れ合いと結びつきを通して必要なものが与えられ、

一つに結び合わされて、神の力によって大きく成長していくのです。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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