1.アッシリア帝国の終わり

エピソード文字数 1,000文字

主は妬む神、復讐する神。

主は復讐し、また憤られる方。

主はご自分に刃向かう者に復讐し、敵には怒りを燃やされる。

神は嫉妬深く、怒りっぽい。

うっとおしいこと、この上なし。

その点、僕ら悪魔はいいよね。

積極的に人間の願いを叶えたりする。

もちろん対価はいただくけれど。

アルヴァーレ様はわたくしに何もお残しになりませんでしたわ。

とっととむしり取ってやれば良かった。

J・カゾット『悪魔の恋』の主人公だね。

ビヨンデッタを呼び出しておきながら、一方的に契約を破棄した男だ。

今度一緒に取り立てに行こう。

天使として止めるべきか……。

めんどいから、また今度でええか。

さて『ナホム書』の話に入ろう。

ナホムが活躍した時代は、ユダ王国のヨシヤ王がいた頃だ。

ヨシヤ王は国内改革を進めていたから、神にとっては文句無し。

『ナホム書』はいつもみたいにエルサレムを非難しない。

代わりというわけでもないけど、アッシリアの首都ニネベの陥落を預言するのさ。

主はお前について命じられた、

「お前の名を継ぐ子孫はもはや出ない。

お前の神々の神殿から、彫像や鋳像を根絶やしにする。

そしてお前の墓を準備する、お前は生き恥をさらす者だから」。

ここで言う「お前」がニネベのことかしら。

生き恥をさらすとは、大層なお言葉。

ニネベを実際に根絶やしにするんは、バビロニアの軍隊やな。

メディアとバビロニアの連合軍か。

「女主人」は連れ去られ、捕囚の身となり、

その召使は、鳩の泣き声のように呻きながら胸を打つ。

「女主人」はニネベの守護神イシュタルのことだね。

その召使とは神殿娼婦のことさ。

強大なアッシリア帝国が滅ぶ、その前兆はあった。

アッシュールバニパルという偉大な王を失い、後継者争いに明け暮れた。

お陰で支配国に反旗を翻されても、それを押しとどめられなくなったのさ。

でかい国が滅ぶ理由ってだいたいそれやな。

なんで仲間内で争ってしまうんやろ。

きっと、各々の正義があるのさ。

僕らにとっては大したことないものでもね。

お前を見る者はだれしも、お前から逃げ去って言う、

『ニネベは滅びた。いったい誰が憐れむだろうか』。

お前を悼む者を、わたしはどこで探せるだろう。

偶像崇拝者など滅んで当然とでも言いたげですわね。

さすがは嫉妬深く怒りん坊な神のお言葉。

神は最後、ニネベの滅びは「喝采」されると言う。

それはアッシリアが今まで酷いことをしてきたからだと。

神がそれを言えた義理か、僕には分からない。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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