2.炉に投げ込まれた三人

エピソード文字数 996文字

バビロニアの王ネブカドネツァルは金の像を造らせた。

そして楽器の音が聞こえたら、どんな音でも必ず拝むように命令した。

しかしこれはイスラエル人にとっては当然偶像崇拝となる。

シャドラク、メシャク、アベド・ネゴの三名はこれを拒んだ。

しかしそれを快く思わない人たちが現れる。

数名のカルデア人が中傷した上、王にこのことを告げたんだ。

命令に従わないユダヤ人たちに王は怒った。

『エステル記』でも似たような話がありましたわね。

ユダヤ人のモルデカイが宰相ハマンにひれ伏さなかった。

そのためにユダヤ人は撲滅の危機に瀕したのでしてよ。

そんなんあったなあ。

せやけど『エステル記』は臣下同士の争いで『ダニエル書』は王直々の怒りや。

これはちょっと厳しいんちゃうやろか。

ネブカドネツァルは三人に真偽を問いただした。

すると彼らは素直に認め、王が燃え盛る炉に放り込むことさえ良しとした。

神が助ける、そうでなくとも金の像は拝まないとつっぱねたのさ。

その意気や良し。

とっとと炎に巻かれて死ぬがよろしい。

熱いのは堪忍やでぇ……。
ネブカドネツァルは激怒し、炉を普段の七倍の熱さに燃やすように命じた。

シャドラク、メシャク、アベド・ネゴの三名は炉に投げ入れられた。

その炎は三名を引いて行った男たちさえも焼き殺した。

とばっちり……。
炉に放り込まれた三人はそこで神への賛美を歌う。

近寄っただけで燃え死ぬ炎の中でよくやるよ。

地獄の業火でならばいかがかしら。

機会があれば大炎熱地獄にお連れいたしましょう。

そこは僕らの地獄じゃないでしょ。
炎はさらに燃え盛り、周囲のカルデア人は焼き殺された。

しかしそこに天使が現れた。

伝承では大天使ガブリエルだとされている。

天使によって炎は炉の外に払われ、三人は全くの無傷となった。

ガブりん大活躍やんか。

お兄ちゃん、鼻高いわ。

ハナンヤ、アザルヤ、ミシャエルよ、主を賛美せよ。

代々に主をほめたたえ、崇めよ。

主がわたしたちを陰府から救い、死の手から救い出してくださった。

また、燃える炎の炉から解放し、火のただ中から解放してくださった。

主に感謝せよ。

主は善なる方、その憐れみは永遠。

ここでは三人の本名が呼ばれとるんやな。

対外的な名前はあくまで仮の名前。

神様にしたら元の名前こそが正しい名前なんやわ。

この出来事により、ネブカドネツァルは神を信じた。

そして三人に高い位を与え、神を冒涜してはならないと命じた。

大逆転ってやつだね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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