10.バハムート

エピソード文字数 1,186文字

神はヨブを強く非難して言った。

自分を無罪とするために、わたしを有罪と定めるのか。

悪人どもをその場で打ち倒せ。

その時、わたしもまたお前を称え、お前の右手がお前を救ったと言える。

自助努力をせなあかん、て言うことなんやろな。

そうしてこそ神様の意に沿うわけや。

さあ、ベヘモットを見よ。

わたしはお前を造ったように、これを造った。

骨は青銅の管のようであり、四肢は鋼鉄の棒のよう。

これぞ神の傑作である。

ベヘモット。

オタクの間ではベヒーモス又はバハムートと呼ぶ方が馴染みがありそうですわね。

あれ?

なんかうちの想像してたんとちゃうんやけど。

バハムートってもっとドラゴンみたいなやつちゃうんか?

この絵は悪魔として描かれたベヘモットだね。

ベヘモットは聖書で「牛のように草を食べる」と書かれている。

西洋のドラゴンをイメージするような描写は全く無いんだ。

また「尾は杉の枝のよう」とも記されている。

そこからベヘモットは象やカバといった動物ではないかと思われた。

せやったら、うちのイメージしとったあれは何なんや。

「バハムートほにゃらら」とか「なんたらのバハムート」って何やねん。

後世の勘違いだね。

それは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が起源ではないかという説がある。

これはアメリカ生まれのテーブルトークRPGなんだ。

1974年から続くシリーズ作品だよ。

バハムートの名前が出たのは1977年のモンスター・マニュアルで。

前作では無名だったプラチナドラゴンに付けられたものだった。

それが、これ。
弱そう……。
しかし人の空想力はあなどれないね。

アラビア語の「バハムート」は響きが格好いい。

そこに竜のイメージを付与したら、あっという間に今の状況さ。

今のようなバハムートはある意味、現代の神話とも言えるでしょう。

ぽっと出のくせに、まるで昔から存在した幻想的な生き物のよう。

神はこのベヘモットとレヴィアタンを挙げて、人の無力さを示した。

そんなものたちを造ったのも神であるから、人が敵うわけもないということだね。

別のもんを褒めることで間接的に自分を褒めるわけやな。

さすがうちんとこのボスは、口が達者。

ヨブは神に応えて言った。

あなたはどんな計画でも実行できない方ではないと悟りました。

わたしはわたしの言葉を忌み、悔い改めます。

ヨブの言葉を聞いた後、神はヨブの友人たちに怒る。

「お前たちはわたしについて正しいことを語らなかった」ってね。

そして彼らに、雄牛7頭と雄羊7頭の捧げ物をするように言った。

その後、ヨブが友人たちのために祈ると、また元の繁栄に戻ったという。

財産はかつての二倍になり、同じ数の子供たちを得た。

元通りになんかなれませんのよ。

新たな子を得たとて、失った子は永遠に失われたまま。

そこのあなた。

あなたはこの物語を、ハッピーエンドだと思いまして?
17世紀フランスの画家ローラン・ド・ラ・イール。

「繁栄を取り戻したヨブ」

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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