14.ニカノルの敗北と死
文字数 1,220文字
ニカノルは神殿に入り、祭司たちにユダ・マカバイを差し出すように命じた。
祭司たちが「知らない」と誓って言うと、ニカノルはこう言った。
「ユダを引き渡さなければ、ここをディオニソスを祭る神殿に建て替えるだろう」
この写真は世界遺産に登録されている、1世紀頃に建てられたバッカス神殿。
つまり、ギリシアにおけるディオニソスを祭る神殿というわけだね。
レバノンにあるこの古代遺跡は、神バアルに由来してバールベックと呼ばれている。
久しぶりにわたくしの登場ですわね。
しかしこの頃にはもう随分と影響力を落としていそうな。
仕方ないね。
なんせギリシア、ローマと巨大な帝国が勢力を伸ばしてきたわけだ。
一地方のマイナな神なんか相手にならない。
『マカバイ記』のデメトリオス1世ソテルの治世は紀元前161年頃。
ヤハウェもまた一地方のマイナな神に過ぎない。
しかしそれを守り通す意思の強さはギリシアに引けを取りはしなかった。
ニカノルはユダとその部下がサマリアに近い地方にいることを耳にした。
彼は危険の無い安息日に攻撃することに決めた。
サマリアに近い地方ってどのへんのことやろ?
サマリアやったらエルサレムからだいぶ北になるけど。
表現がちょっとややこしいね。
エルサレムから見てサマリアのある方角、つまり北部を意味している。
実際にはベト・ホロン近く、アダサという名の土地なんだ。
けれど安息日の攻撃が通じたのは昔の話でしてよ。
確かユダの父マタティアが安息日でも応戦すると決めていたはず。
随分と日が経っていますが、ニカノルはそのことを知らなかったのかしら。
実はニカノルの側にもユダヤ人たちが従軍している。
彼らは安息日を尊ぶべきだと主張して、ニカノルに一蹴されている。
んん?
ユダ・マカバイの側は安息日でも戦えるのに、ニカノルの側はでけへんことにならんか?
あくまでユダヤ人に限っての話ではあるけれど。
ニカノルの全軍においてユダヤ人の割合はさほどでもないだろう。
けれど安息日に攻め込むという作戦は、実際のところ裏目に出たと思う。
ニカノル、ユダ・マカバイ共に戦闘準備を行った。
マカバイはアッシリア王センナケリブ軍185,000を天軍が撃破したことに触れた。
そしてその力を自らにも与えてくれるよう神に祈った。
ヒリス・ファン・ヴァルケンボルク(Gillis van Valckenborch)の作。
おそらくセンナケリブが天軍に敗退している場面だろうと言われている。
右奥でミカちゃんが暴れてるね。
ユダ・マカバイの元に天軍は訪れない。
けれど、彼らは「神の力の現れ」をもって敵に打ち勝った。
自分たちが力強く戦えたのは神のおかげというわけだ。
戦いが終わり、ユダヤ人たちはニカノルが討ち死にしているのを見た。
ニカノルの首を切り、その舌を切り取って鳥に与え、要塞に吊り下げた。
ニカノルか。
生まれる時代が異なれば、ユダともずっと仲良ういられたんかもしれんな。
この結末をユダはどない思ったんやろか。
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