1.サンダルフォン

エピソード文字数 1,172文字

見よ、主の大いなる恐ろしい日が来る前に、

わたしは預言者エリヤをお前たちに遣わす。

彼は父の心を子に向け、子の心をその父に向けさせる。

わたしが来て、地を呪いで滅亡させることのないためである。

『マラキ書』最終章、第3章23節と24節の言葉だね。

順序的に『マラキ書』はいわゆる旧約聖書、最後の書物となる。

つまり、これは旧約聖書全体を通しても最後の言葉ということだ。

マラキは旧約聖書のトリやな。

責任重大の大変なお仕事やで。

実はマラキという人物については諸説ある。

例えばマラキとは『エズラ記』のエズラであるという説。

あるいは固有の名前ではなく「神の使い」を略したという説。

しかしどれも確証はない。

時代はバビロン捕囚以降のペルシア時代と推定されているんだけど。

そして『マラキ書』においても偶像崇拝を厳しく排除する。

「ユダは裏切りを行い」「主が愛される聖所を汚し」「異国の神の娘を娶った」

とか言ってね。

「ユダは裏切りを行い」ってなんかドキっとするな。

偶然なんやろけど。

偶然、なのかしら?
偶然、なのかねえ。
もちろんここでの「ユダ」は南ユダ王国またはユダヤ民族を示す。

個人であるイスカリオテのユダとは関係ない。

神様が怒って、主の日が来る。

そんでやっぱみんな神様に立ち返ろうって話になるんやな。

それはええんやけど、最後に預言者エリヤってなんでやろ。

活動時期も離れとるし、唐突やん。

明確な根拠はなく謎のままなんだ。

ただ、エリヤは昇天してサンダルフォンという天使になったという伝承がある。

元々人であった天使が、使いとして適任だと考えられたのかもね。

そして旧約聖書最後の言葉は新約聖書に強い影響を与えた。
『マタイによる福音書』第11章14節

あなた方に受け入れる気持ちがあれば分かることだが、

ヨハネこそ来たるべきエリヤである。

『マタイによる福音書』第17章12節

しかし、あなた方に言っておく。

エリヤはすでに来た。

それなのに、人々は彼を認めず、意のままにあしらった。

そのように、人の子も人々から苦しみを受けようとしている。

『マルコによる福音書』第9章13節

あなた方に言っておく。

エリヤはすでに来た。

そして、彼について書き記されているように、

人々は、したい放題のことを彼にしたのである。

『ルカによる福音書』第1章17節

彼はエリヤの霊と力をもって主に先立って行き、

父の心を子に、不従順な者を正しい人の思いに立ち返らせて、

心構えのできた民を、主のために用意する。

預言者エリヤは来た。

しかも洗礼者ヨハネがエリヤその人だと言う。

ならば「父の心を子に向け、子の心をその父に向けさせる」の意味も自然と決まる。

新約聖書では救世主が現れたか否かの論争の前に、

預言者エリヤが来たかを確認しなければなりませんわね。

エルサレムは散々滅びたけど、ようやく次の時代に進むんやな。

気合入れて行くで。

にゃあ。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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