2.日はまた昇る

エピソード文字数 1,137文字

一つの代は去り、次の代が来る。

しかし、大地はいつまでも留まり続ける。

日は昇り、日は沈み、元の所にあえぎ戻って、また昇る。

ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』の元ネタやったな。

「日はまた昇る」って再起をかけるみたいな響きあるけど、

元ネタ見ると「また」って何度も繰り返すニュアンスやな。

『コヘレト』の主題は「一切は空」というものだ。

100年、200年経とうとも太陽は変わらず昇り、沈む。

そうしたありかたを見て、人の営みを「空しい」と本書は語る。

「あえぎ戻って」など、まるで太陽が人かのよう。

それによく見ればこれは天動説、地球中心説に基づいていますわね。

太陽だけじゃない。

古代イスラエルでは、川の水もまた地下を通って戻ってくると考えられていた。

天と地、世界は循環しているのさ。

川はみな海に流れ入る。

しかし、海は満ち溢れることがない。

川は元の所に戻り、また流れ出る。

かつてあったことは、いずれまたある。

かつてなされたことは、いずれまたなされる。

「歴史は繰り返す(History repeats itself)」っちゅうやつやな。
小学館の大辞泉によるとローマの歴史家クルチュウス=ルーフスの言葉らしい。

ただ、実際に何の資料があってそう言っているのか、根拠が全く分からない。

ルーフスよりも前、古代ギリシアの歴史家ポリュビオスの方が信ぴょう性は高い。

彼は「歴史」よりも広範な、「宇宙論」的な「再現」について言及している。

そして西洋の哲学者たちは「歴史の再現(Historic recurrence)」について議論した。

(G.W. Trompf, The Idea of Historical Recurrence in Western Thought, passim.参照)

明確に「歴史は繰り返す」と言ったのは、カール・マルクスくらいかしら。

他にはジョージ・バーナード・ショー?

いずれにせよ、広まった言葉の「起源」とは言えそうもありませんが。

こんな会話も、どっかで何度も繰り返されてるんやろか。
知恵が多ければ悩みも多く、知恵が増せば憂いも増す。
いっぱい勉強したのに、余計に苦しむとか……。

せやったら勉強せんと、楽しゅう生きとる方がええんとちゃうか?

知恵ある者の目は、その頭にあるが、

愚かな者は闇の中を歩く。

しかし、同じ運命がこの両者の上に臨むことを、わたしは知った。

「同じ運命」とはすなわち「死」のことだ。

賢者だろうが愚者だろうが死ぬ時は死ぬ。

愚者と同じく死ぬと言うのに、どうして賢者などと言えるのか。

死を前にして知恵を求めることの空しさを語る。

死ねば天国に行き、神様によしよししていただけるのでしょう?

であれば良いではありませんか。

そんな風に気楽に死を受け入れられれば楽かもしれないね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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