1.イスカンダルと後継者たち

エピソード文字数 1,364文字

『マカバイ記』は『エステル記』から200年以上経った頃の時代についての話なんだ。

ただ本編に入る前に、アレクサンドロス大王3世について説明している。

その名はペルシア語またはアラビア語においてはイスカンダルと呼ぶ。

『Fate/Zero』で、へっぽこ魔術師ウェイバーきゅんのサーヴァントになってたね。

僕も征服王イスカンダルの活躍に胸躍らせた一人さ。

劇中の「王の軍勢」即ち、「アイオニオン・ヘタイロイ」は見事やったな。

あれならうちも、相手にとって不足なしや。

劇中に登場する、イスカンダルの宝具だね。

心象風景を具現化し、自らの大軍勢によって敵を蹴散らすとんでもないスキルだ。

アイオーン(aion)とはギリシアにおいて「時代」という意味。

アイオニオン(aionion)とはそこから転じて「永遠」となりましてよ。

また、ヘタイロイ(hetairoi)はマケドニアの重装騎兵集団のこと。

ただし元のギリシア語の意味は「王の近く」というもの。

「友」という意味もありますわ。

ほしたら、あれやな。

「アイオニオン・ヘタイロイ」で「ズッ友だょ!」ってことか。

間違いではない……、かな?
マケドニア王アレクサンドロスはペルシア王ダレイオスを破った。

戦い、砦を占領し、多くの国で略奪を働いた。

そして彼は高慢になり、その心は驕った。

ついには病に伏して倒れたが、彼の死後、その臣下たちが各々の領地を治めた。

こうして数々の悪が地上にはびこった。

なんや、聖書ではイスカンダルは悪い奴扱いなんやな。

まあ、あんだけ好き勝手しとったらしゃあないか。

急激に好き勝手したせいか、彼の死後、帝国はバラバラになった。
マケドニアはアンティパトロスの子、カッサンドロスが支配した。

故にその王朝はアンティパトロス朝またはカッサンドロス朝と呼ばれる。

しかしその後の勢力争いで、アンティゴノス朝マケドニアとなった。

また、急にややこいな。
名前とか覚える必要ないから、そういうもんかと聞き流してくれていいよ。

極論、「当時はややこしい世界だった」って思うくらいで構わない。

まあ、なるべく覚えとくつもりで聞いとくわ。

サタニャエルくんも頑張って教えてくれとるわけやし。

大丈夫。

も少しだけ、はしょって進めよう。

マケドニアの隣、トラキア王はリュシマコス。

彼はインドの僧に弟子入りしたり、ライオンを素手で倒したりしたらしい。

物語的におもしろいエピソードに事欠かない、いいキャラクターだ。

エルサレムが飛び地になっているね。

セレウコス1世ニカトルが築いた、セレウコス朝シリア。

『マカバイ記』の舞台でもある。

そしてプトレマイオス朝エジプト。

この王朝最後のファラオこそ、カエサルの妻となるクレオパトラ7世だ。

征服し、世に安寧をもたらすどころか。

かえって混乱を招いただけではないかしら?

大帝国を維持するのはそれだけ大変ってことさ。

中世最大の版図を広げたモンゴル帝国。

古今において世界最大の覇を唱えた大英帝国。

いずれも最後にはバラバラに分裂して終わりを迎えている。

長い歳月の間、アレクサンドロス大王の後継者たちによる支配が続いた。

そして彼らの中から、アンティオコス・エピファネスという罪深い芽が出た。

彼はセレウコス朝シリアの王となり、ユダヤを支配した。

(アンティオコス4世エピファネス 紀元前215年? - 紀元前163年)

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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