5.インマヌエル預言

エピソード文字数 1,060文字

ユダの国王アハズの治世。

アハズは主に従うか、眼前の脅威アッシリアに臣従するかを迫られる。

見えもしない神に従うより、アッシリアに従う方がよほど賢明さ。

しかし、当然ながらそうした行いは聖書的にアウトだ。

アハズは「主を試みるようなことはしない」と言って神を遠ざけた。

それに対し、イザヤは預言を与えた。

見よ、おとめが身籠って男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ。

その子は、悪を退け善を選ぶことを学ぶまで、凝乳(ぎょうにゅう)と蜂蜜を食べる。

ぎょうにゅう?

なんやそれ。

凝乳というのはフレッシュチーズの一種だよ。

羊や牛の乳に酵素を作用させてできる凝固物のことだね。

牛乳にレモンを混ぜるとどろどろになるでしょ?

幼い頃、よくそうやっておやつにしたものです。
インマヌエルという名前は「神はわれらとともにいる」という意味だ。

後のユダヤにとっての救世主的な存在だとされる。

インマヌエルと呼ばれる子は記録にない。

実在する人物の名としては存在しなかった。

しかしこの救世主的な性格はのちのキリスト教にも影響している。

『マタイによる福音書』にもその名が現れているのさ。

『マタイによる福音書』第1章23節

「見よ、おとめが身籠って男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる」。

この名は、「神はわたしたちとともにおられる」という意味である。

ヨセフが自分の知らぬ内に身籠ったマリアを離縁しようとしたところ。

天使が慌ててヨセフとマリアの間を取り持ったのですわ。

インマヌエルとはキリスト教におけるイエス・キリスト。

憎き救世主様でございます。

当然ながらユダヤ教徒にとっての救世主ではない。

『イザヤ書』においてはまだ見ぬ救世主の姿に名を与えたわけだ。

歴史的な展開については『列王記』で見た通り。

アッシリアはより強大なバビロニアに取って代わられる。

そしてユダ王国はバビロニアに滅ぼされ、民は捕囚の身となった。

そこからの帰還とこれからの発展。

そのためにも、やっぱり神様に回帰せなあかん。

『イザヤ書』はそう言うとるわけやな。

(イスラエルの民が再び戻り、かつての栄光を取り戻したとき)


その日には、お前は言うであろう、

「主よ、あなたに感謝いたします。

あなたは、わたしに怒りを燃やされましたが、

あなたの怒りは収まり、わたしを慰めてくださるからです。

見よ、神はわたしの救い。わたしは信頼して恐れない。

まことに主はわたしの力、わたしの歌、わたしの救いとなってくださった」。

アッシリアに従うよりも、やっぱ神様の方がええやろ?
であれば最初から救っておけ、と言いたくもなりますわね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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