6.友人たちへの怒り

エピソード文字数 916文字

泣き言を繰り返すヨブに対する友人たちは辛らつだ。

彼らの一人、ビルダドはヨブに対して、いつまでそんなことを言うのかと叱った。

ヨブの子供たちが死んだのも神に対して罪を犯したからだと非難した。

その上で、清く正しく生きていれば元通りになると諭したんだ。

元に戻るだなんて……。

お優しいご友人ですこと。

こいつらは自分らの正しさしか見えてへんのや。

弱り果てた人の心に寄り添う気持ちなんかあらへん。

ビルダドは言った。

神は非の打ち所の無い者を見捨てず、悪人を支えることはない。

神はあなたの口を笑いで満たし、悪い者どもの天幕は消えうせる。

これについてヨブは「そのとおり」だと首肯した。

神は絶対であり、万物の創造主であると語る。

しかしヨブは自身が「非の打ち所のない者」だという確信を捨てなかった。

自分がいかに正しくても、神に逆らうことなど不可能だと嘆く。

神は非情であり、罪なき者の絶望をあざ笑いさえすると言ってね。

単なる嘆きやったんが、徐々に神様に対する反抗みたいになってきとんな。
神への抗議。

これはサタンの喜ぶところ、かしら。

このようなヨブの態度を見て、三人目の友人ツォファルもまた戒めようとする。
ツォファルはヨブもまた罪びとであると言った。

そしてヨブに対し、神の深さを計ることができるのかと言った。

神はヨブよりもずっと物事を見通しており、邪悪を見逃しはしない。

心を正しく持っていれば、いずれ安らかな生を得られるだろうと告げた。

正論アンド正論。

確かに、聖書における神は唯一絶対や。

せやけどこれがぼろきれみたいな友人にかける言葉か?

ヨブは友人たちに「あなたたちこそ、その民である」と答えた。

神の前に揺るがぬ信仰を抱く立派な人たちだというのだね。

けれどヨブはいい加減にキレた。

「わたしはあなたたちに劣る者ではない」と言った。

そして友人たちを「神に取り入ろうとする」のかと非難したんだ。

なるほど、確かに。

この友人たちはまるで神の弁護人ですわね。

現代でもよく見かけますわ。

嫌われることを恐れ、理を曲げてまで弁護に奔走する哀れな草を。

ヨブは友人たちに言った。

神があなたたちを調べたなら、あなたたちは無事でいられるだろうか。

神はきっとあなたたちを責められるだろう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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