2.ダビデの勇士たち

文字数 1,163文字

いきなりだけれど、ダビデに従う勇士の話をしよう。
ほんまにいきなりやな。

『歴代誌』はアダムの系図とかあるんやなかったか?

長々と系図を見続けるのは疲れるんだ。

こういうので聖書通読を断念する人も少なくないらしいよ。

誰が誰の子だの延々語られても、知ったことではないわね。
もちろん研究対象としては重要だ。

けれど僕らは悪魔なんだから、もっと聖書を楽しまないとね。

うちは天使やけどな。
はい。

まだ、そのようですわね。

そういうわけで色々飛ばして「ダビデの勇士たちの名簿」を見てみよう。

『サムエル記』にも書かれている話だけれど、内容が微妙に異なっているんだ。

『サムエル記』におけるダビデの三勇士

・イシュバアル(ヤショブアム)

・エルアザル

・シャンマ


『歴代誌』におけるダビデの三勇士

・イシュバアル(ヤショブアム)

・エルアザル

・アブシャイ

メンバが一人代わっとるな。
『サムエル記』でのアブシャイも勇士に名を連ねている。

けれどイシュバアル、エルアザル、シャンマの三人には及ばなかったとあるんだ。

しかし『歴代誌』ではその内容ががらりと異なる。

アブシャイは三勇士の中でも誉れ高く、格が違っていたらしい。

三人ごぼう抜きの高評価やんけ。

いったいアブシャイに何があったんやろ。

正直、よく分からない。

アブシャイの兄は総司令官ヨアブだけれど、それが関係しているのかも。

単なる書き間違い……。

にしては、「格が違う」などと明言するのは変ですわね。

カブツェル出身のベナヤは多くの功績を残した。

モアブ人アリエルの二人の子を殺した。

巨漢のエジプト人に棍棒で立ち向かい、槍を奪って殺した。

三勇士には及ばないが、ダビデは彼に護衛を司らせた。

ヌードの多い歴史画に定評のあるイギリス人画家ウィリアム・エッティだよ。

19世紀初めに活躍し、ルーベンスを研究していたらしい。

パンツ一枚で戦う戦場など、滑稽ですわ。
「クレオパトラの勝利(Cleopatra's Arrival in Cilicia)」

なんか見てると、ここはヌーディストビーチかって雰囲気あるね。

おすすめは「Male Nude, with Arms Up-Stretched」

日本語に訳すと、「腕を上に伸ばされた男の裸体」かな。

えもいわれぬ、いやらしさがいい感じだ。

サタニャエルくんはむっつりすけべやからな。
ベナヤについての記述は『サムエル記』『歴代誌』でさほど違いは無い。

エジプト人との戦いは、どことなくダビデとゴリアテの戦いを思わせるね。

やはり決定的な違いはシャンマの存在だ。

彼は三勇士どころか、『歴代誌』全体を通しても姿が見えない。

それはそれは。

またなんか、裏がありそうやな。

小説家であれば妄想を働かせるところだね。
ともあれ、注目すべき勇士はこれくらいだ。

他にも大勢の勇士の名が挙げられるけれど、系図を読むのと変わらないかな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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