1.ケートスに飲まれしヨナ
文字数 1,728文字
本来はクジラなどを意味します。
神話ではポセイドンによって作られた怪物で、生贄のアンドロメダを食べようとする。
そこを救い出したのがメドゥーサ退治で有名なペルセウスでしてよ。
『ヨナ書』はヘブライ語で書かれたもので、それがギリシア語に翻訳された。
その時に「巨大な魚」は「ketos megas」となったのさ。
すなわち神話のケートスを指すわけじゃないけれど、関連付けられた表現だろうね。
海は大時化となり、船は今にも砕けそうになった。
船員たちは神に助けを求め叫び、積荷を海に投げ込むなどした。
一方、ヨナは船底に下りて眠りこけていた。
「寝ているとは何事か。起きて神に向かって叫びなさい」
「わたしを海に投げ込みなさい。そうすれば海は鎮まるでしょう」
そしてヨナは三日三晩、魚の腹の中にいた。
神なる主はヨナを熱さの苦痛から救うために一本の唐胡麻を生えさせた。
頭上を日陰で覆われ、ヨナは非常に喜んだ。
神は虫に命じてその唐胡麻を食い荒らさせた。
東風と太陽の照り付けにヨナは気絶しそうになって言った。
「死んだ方がましだ」と。
「お前は自分で苦労して育てもせず、
一夜にして生まれ一夜にして滅びたこの唐胡麻を惜しんでいる。
ましてわたしは、右も左も分からない十二万以上の人と、
多くの家畜がいる大きな町ニネベを惜しまずにいられるだろうか」。