13.異邦人コルネリウスの受洗

エピソード文字数 1,169文字

オランダ黄金時代の画家、ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト。

「百人隊長コルネリウスのビジョン」

右側にいるのがコルネリウスで、天使の前で跪いているね。

天使はコルネリウスに、ペトロを家に招くよう告げているんだ。

ペトロが幻の中で神に「汚れた者を食べたことはない」と言ったのはその翌日。

ユダヤの伝統で「汚れた」とされたものは、イエスが「清めた」はずだ。

しかし、伝統にどっぷり浸かったペトロはそれを簡単に受け入れられずにいた。

それは例えば豚とか、空の鳥なんかのことだね。

信仰とは難しいものですわね。

一切の疑念無く信仰を持つ者ばかりではない。

イエスの弟子ですらこうなのです。

「正しい信仰」とやらで悩むなど、空しい限りでしてよ。

ペトロは自分が見た幻について考えこんでいた。

そこにコルネリウスの使いが来て、ペトロを家に招待したいと告げた。

招待の翌日、ペトロはコルネリウスの家に入り、多くの人たちの前で言った、

「ユダヤ人には他国の人と交際したり、訪問することは許されていません。

しかし神はどんな人でも、清くない、汚れた者と言ってはならないと示されました。

そういうわけで、お招きにあずかったとき、ためらわずに来たのです」。

ユダヤ人たちは汚れを恐れ、なるべく異邦人とは交わらなかった。

そのことを示す箇所が『ヨハネによる福音書』にも書かれている。

『ヨハネによる福音書』第18章28節

さて、ユダヤ人たちは、イエスをカイアファのもとから総督邸に引いていった。

明け方であった。

ユダヤ人たちは、汚れを受けることなく過越の食事をすることができるように、

総督邸には入らなかった。

自分らの習慣と異なるもんを忌避したんやな。

せやけど、そんな態度やと、相手からどう思われるか……。

だがペトロはそれではいけないと言った。

神は人を差別しない。

神を畏れ敬い、正しいことを行う者は、誰であっても神に受け入れられる、ってね。

神が差別しないことは、『申命記』に端的に書かれている。

『申命記』第10章17節

あなたたちの神、主こそもろもろの神の神、もろもろの主の主、偉大で力ある畏るべき神。

人を偏って見ず、賄賂を受け取られない。

神は差別しない。

差別するのは人。

ペトロが説教をしていると、み言葉を聞いていた人たちに聖霊がお降りになった。

割礼を受けている信者で、ペトロについて来た人たちは皆驚いた。

異邦人たちにも、賜物である聖霊が注がれたためである。

そしてペトロはコルネリウスたち異邦人に洗礼を授けた。

けれど、この行為は後々、他の信者たちの非難を受けることになった。

するとペトロは以前に見た幻の話をし、異邦人に聖霊が降ったことを伝えた。

汚れていると思っていたものは清められたのさ。

これを聞いて人々は静まり、神をほめたたえて言った、

「では、神は異邦人にも、命に至る悔い改めをお与えになったのだ」。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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