1.箴言とは

エピソード文字数 1,076文字

『箴言(しんげん)』の作者はダビデの子、ソロモンとされてきた。

実際にはソロモン一人ではなく、複数の人物が関わっていると言われる。

そもそも「箴言」ってどういう意味なんや?

聞き慣れへん言葉やけど。

「箴(Zhen)」というのは中国語で、戒めの文を表す。

「箴言」とは戒めの言葉、教訓の集合を意味している。

元々のヘブライ語では「ミシュレー」と言う。

『箴言』の冒頭にある「ミシュレー・シュロモー」からの引用だね。

「シュロモー」というのはソロモンのこと。

単数形「マーシャール」を複数形にすると「メシャーリーム」

その後ろに「ソロモンの」が付くと「ミシュレー」に変化するのさ。

「マーシャール」には「比喩」や「格言」といった意味がありましてよ。

また、「支配する」「統治する」の意味を持つ「マーシャル」の派生とも。

様々な意味を持った言葉を集めたもの。

それが『箴言』ですわね。

実は同時代、エジプトでも似たようなものが書かれている。

『アメンエムオペトの教訓』と呼ばれるもので、官僚教育に使用された。

旧約聖書学者の勝村弘也氏によれば次のような類似点が見られるらしい。

(『箴言』第23章4-5節)

富を得ようとあくせくするな。

お前の分別によって、(そのようなことを)やめよ。

お前の視線をそれに投げかけると、もうそれはない。

それは必ずや翼をつけて、鷲のように天に飛んで行く。


(『アメンエムオペトの教訓』)

(富が)ガチョウのような翼をつけて天に飛んで行く。

お金に羽生えて逃げられたら悲しいなあ。

ちゅうか、ガチョウより鷲の方が速いやろ。

イスラエルの方が厳しい感じするな。

勝村弘也氏が言うには「ガチョウどころではないと考えた」のだろうってことさ。

他にも次のような言葉があるね。

(『箴言』第16章19節)

貧しい者とともにへりくだることは、

高ぶる者とともに分捕り品を分けるに勝る。


(『アメンエムオペトの教訓』)

神の手のうちにある貧乏の方が、倉庫の中にある富よりもよい。

心の楽しい時のパンの方が、悲しみのともなう富よりもよい。

ここで『箴言』の語る「分捕り品」は戦争で得たものじゃない。

強い者が貧しい人を犠牲にして金儲けをするという意味だ。

綺麗事でしょう。

強い者が富んでこそ、弱者におこぼれが与えられましてよ。

『箴言』は道徳的でもあるからね。

道徳嫌いのビヨンデッタには不満も多かろうさ。

ともあれ、『箴言』とはどういうものか、だいたいのところは理解できたと思う。

そして第1章7節は聖書の中でもそれなりに有名な言葉で締めくくられる。

主を畏れることは知恵の初め。

無知な者は知恵をも諭しをも侮る。

(新共同訳)

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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