2.ソロモンの富

エピソード文字数 1,273文字

『列王記』に登場したシェバの女王は『歴代誌』でも顔を見せる。

彼女はやはりソロモンの知恵を試し、彼に財宝を与えた。

多少の違いはあるけれど『列王記』と『歴代誌』の内容はほぼ同じ。

その多少の違いにはまりだすと泥沼だから、ここはさっさと先に進もう。

1年間にソロモンのもとに入ってくる金の重量は666キカルであった。

ソロモンは延べ金の大盾200を造った。

大盾1つには600シェケルの金が使われた。

666て……。
気になっちゃうよね。

でもたぶん心配しなくていいよ。

ここでの666は「獣の数字」とは無関係だ。

この数字を見て「ソロモンは反キリストだ!」なんて言っちゃう人もいるけどね。

さすがに言いがかりだよ。

ところで、666キカルとはどの程度の金なのかしら?
1キカルは3000シェケルと言われている。

シェケルは通貨にも用いられている単位だね。

1シェケルが現代で言う何グラムなのかはいくつかの資料がある。

古代イスラエルの発掘調査で4分の1シェケルの分銅が見つかったんだ。

ほんなら重さはばっちりやな。
ただ、当時の技術力では同じ重さの分銅は作れなかったんだろうね。

いくつか見つかっているけれど、どれも微妙に重さが異なっている。

ユダヤ電子図書館(JEWISH VIRTUAL LIBRARY)の記載によると、

2.63グラム、2.49グラム、そして2.54グラムの分銅が見つかったらしい。

そしてそれらは亀と熊の形をしていたのだとか。

ではその3つの重さを平均いたしましょう。

およそ2.55グラムで、1シェケルはその4倍、10.2グラムですわ。

1キカルが3000シェケルということは、3000×10.2

すなわち30,600グラム、およそ31キログラムとなりますわね。

それが666キカルやろ?

666×31で20,646キログラム……

20トン超えとるやないか。
金の価格は動くから一概には言えないけれど。

2018年1月の田中貴金属小売価格平均はグラムあたり4,786円だ。

つまり、1キログラムなら4,786,000円。

20,646キログラム(666キカル)×4,786,000円

98,811,756,000円となる。

めんどくさいから、ざっくり1000億円くらいってことでいいかな。

1000億円か……。

そんだけあったら何が出来るんやろ。

わたくしにお任せを。

1000億円を10倍、100倍の価値にしてさしあげますわ。

マジか。

夢が広がるなあ。

(これ絶対、周りを不幸にして相対的に価値を上げるやつだな)
ともあれ、これはあくまで金に限っての話だ。

それ以外の財宝も沢山集まり、銀は「価値の低いもの」になるくらいだった。

それくらい金銀財宝が溢れていたってことだね。

『歴代誌』ではソロモンの1000人の妻たちが見当たりませんわね。
もちろんだとも。

ソロモンが偶像崇拝をする原因を作ったのは大勢の外国人妻だった。

『歴代誌』において、そんな人たちに出てきてもらっては困るのさ。

『歴代誌』のダビデとソロモンの統治はまさにイスラエル黄金時代だ。

しかしその夢のような時代も、国家の分裂によって切り裂かれてしまう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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