1.マグダラのマリアによる福音書

文字数 1,077文字

『創世記』から『ヨハネの黙示録』まで、色々あったなあ。

これでようやく聖書との旅も終いやで。

ミカちゃん、それはちょっと気が早いんじゃないかな。

確かに正典に納められた聖書についてはほぼ見終えたと言える。

けれど僕らは悪魔だよ?

教会の定めた「正典」なんかに従う言われがあるかい?

せやから、うちは天使やっちゅうねん。
まあ、ええわ。

確かに今までも「正典」以外の話はちょくちょく出とったな。

そのへん全部網羅してくんか?

それも悪くない。

とは言え、それをするには相当の覚悟と根気が必要だ。

だから僕は最も注目されている「外典」の二つを見ていこうと思う。

そしてまず最初に見るのが『マリアによる福音書』だ。

この書物はグノーシス主義の福音書文書の一つとされている。

ちなみに他には『ユダの福音書』『フィリポによる福音書』

『真理の福音書』『マルコの秘密の福音書』『救世主の福音書』がある。

そちらの方がタイトルからしてずっと面白そうではありませんこと?

『マルコの秘密の福音書』など、是非とも暴いてみたく思いますわ。

『救世主の福音書』とか熱いやんけ。

当然、救世主っちゅうのはイエス様のことなんやろ?

いちおう、イエスのことだろうと想定されてはいる。

ただし、本文にその名は記されていない。

そのへんはさて置き、『マリアによる福音書』に戻ろう。

ここで言う「マリア」がどの「マリア」なのかは書かれていない。

おそらくマグダラのマリアだろうと言われている。

だから福音書も『マグダラのマリアによる福音書』と呼ばれたりする。

マグダラのマリアはイエスの復活に最も近い女性だった。

特に『ヨハネによる福音書』では復活後最初の目撃者として書かれていた。

あちらこちらにその名を広めていますものね。

彼女以外のマリアを想定する方が難しいのでしょう。

完全な状態で残っていないというのが残念なところさ。

『マリアによる福音書』の発見は1896年。

ムゼウムスインゼル(博物館島)に持ち運ばれた『ベルリン写本』の解読が進んだんだ。

ちなみにムゼウムスインゼルは世界遺産に登録されている。

バビロンのイシュタル門がそのコレクションとして有名だ。

完全な状態で残ってないってことは、読まれへん箇所があるってことか。

どんくらい無くなってもうたんやろ。

最初のところから6ページ目まで。

それと、11から14ページが完全に失われてしまった。

後は断片的に読めない箇所があるような感じかな。

最初の6ページが読めないというのは少々残念ですわね。

普通、書き出しの部分が最も大事なところでしょうに。

仕方ないさ。

全てが失われず、現代に蘇ったことこそ感謝しよう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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