1.自己言及のパラドックス
文字数 1,174文字
「クレタ人は、常習的な嘘つき、たちの悪い獣、怠け者の大食漢」。
仮にこの一文が正しいとしても、偽であるのだから、誤った文となる。
逆にこの一文が誤っていたなら、真であるのだから、正しい文となってしまう。
こんな風に自己を含めた言及により生じるパラドックスのことなんだ。
紀元前500年から600年ころにいたとされる伝説的な詩人エピメニデスのことだ。
その彼が残した詩に「クレタ人はいつも嘘つき」と書かれていたと言う。
シリア正教会の神学者、メルヴのイショダードの注釈に詩が残っているらしい。
傾向の話をしとるのに「全部やない」言うて反論したり。
部分の話をしとるのに「そんな傾向はない」とか言うてみたり。
そもそも会話がお喋りなんか、議論なんか、それも分からんようになっとる。
清い人にとっては、すべてが清いのです。
アブラハムやダビデの血統であることに魅了されて、延々と系譜を云々したとか。
「教え」には何の意味もないから、「作り話」と吐き捨てたんだと思う。
(Cambridge Bible for Schools and Colleges 参照)