11.セレウコス朝シリアにおける政争

エピソード文字数 1,175文字

ユダ・マカバイはシリア軍相手に奮闘した。

しかし弟のエレアザル・アワランを失うなどして、ベトザカリアから撤退。

エルサレムで防衛にあたった。

対するアンティオコス5世エウパトルはエルサレムに進軍。

事前に背後のベトツルも占領するなど、用意周到だ。

随分と追い詰められましたわね。

ここからどのような神の奇跡を見せてくださるのかしら。

両軍は攻城機、投石器などを作り何日も戦った。

しかし倉庫から食糧も無くなり、多くのユダヤ人たちが散り散りとなった。

聖所には僅かな者だけが残っていた。

さすがに追い詰められ過ぎやろ。

ここまで来たら、やっぱうちが出て行くしかないんちゃうか?

天軍は常在戦場。

いつでも出撃オッケーやで。

心配には及ばない。

神の奇跡、とは聖書に書かれていないけれど、それほどのことが起きたんだ。

シリア軍最高指揮官のフィリポスが国政を掌握しようとしたという。

これを聞いて慌てたのが宰相リシアス。

リシアスにとってフィリポスはライバルみたいなもんだ。

エルサレムなんて辺境で戦っている隙に権力が奪われそうになってしまった。

足元を疎かにしましたわね。

首都アンティオキアには距離がありますが……。

船があれば速そうやな。

全軍を運べるかどうかは知らんけど。

エルサレムにかまけている場合ではない。

リシアスは王にユダヤ人との和睦を進言し、王もこれを受け入れた。

ギリギリのところで助かったんやな。
宰相リシアスは王の軍と指揮官と兵に向かって言った。

「われわれは日ごとに弱まり食糧は乏しい」

「包囲しているところは堅固で、国の政務もある」

「それ故、彼らが自分たちの律法に従って暮らせるようにし、和睦しよう」

エルサレムはシリア領内にありながら自治権を認められた。

とんでもない特別扱いですが、それを力でもぎ取った。

実にけっこう!

それをなすだけの力が彼らにあったということでしてよ。

これで一件落着、てことでええんか?
王はユダヤ人に人を遣わし講和を申し入れ、ユダヤ人はこれを受け入れた。

ところが王は立てた誓いを破り、周囲の城壁を引き倒すよう命じた。

そして急いで立ち去って、アンティオキアに帰った。

何最後にやらかしてくれとんねん。
まさに鼬(いたち)の最後っ屁。

お可愛いこと。

可愛いかどうかはさて置き。

アンティオコス5世エウパトルは首都に戻り、フィリポスと戦った。

そして力ずくで町を奪取したとされる。

しかしそれで安心したのもつかの間。

アンティオコス5世エウパトルは王位を奪われることになる。

新たな王の名はデメトリオス1世ソテル。

アンティオコス4世エピファネスの兄、セレウコス4世フィロパトルの子。

ややこいなあ。

つまり、アンティオコス5世は従兄弟のデメトリオス1世に負ける。

ちゅうことか?

その通り。

そして後に、デメトリオスはユダヤ人を攻めることになる。

ユダヤ人にとってはつかの間の平和だったというわけだ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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