5.三度目の正直

文字数 1,227文字

これで三度、わたしはあなた方のもとを訪れることになります。

「すべてのことは、二人または三人の証言によって確定されるべき」なのです。

かつて罪を犯した人やそのほかすべての人に、わたしは二度目に滞在していた折、

あらかじめ言っておいたように、離れている今も前もって言っておきます。

「今度行った時は、もう容赦しない」と。

パウロはコリントに三度目の訪問か。

なんや急に「証言」とか言い始めたけど、どういう意図なんやろ。

「証言」については『申命記』に書かれていることだね。

一人の証言をもって他者を有罪にしてはいけないという話だ。

『申命記』第19章15節

いかなる悪でも、罪でも、人が犯すどのような罪咎でも、

一人の証言だけで立証されてはならない。

二人、または三人の証言によって、そのことが立証されなければならない。

悪意を持つ二人が組んで証言すれば、相手を貶めることも出来そうですわね。

『ダニエル書』では、人妻を手籠めにしようとした老人二人がおりましたでしょう。

『ダニエル書』第13章28-29節

(人妻のスザンナを手籠めにしようとして失敗した)

さてその翌日、人々が彼女の夫ヨアキムの所に集まったとき、

二人の長老は、どうしてもスザンナを死罪にしようという不法な企みを抱いていた。

彼らは人々の前で言った、

「ケルキアの娘、ヨアキムの妻スザンナを呼びにやりなさい」。

そこで人々は呼びに行った。

そんなこともあったなあ。

こん時はダニエルが現れて事件解決したから良かったものの。

似たようなことがあちこちであったんちゃうかって気ぃもするな。

現代のような科学捜査も無い時代だ。

偽証によって貶められた人もより多かっただろうね。

とまれ、ここでの話は裁判ではなく、パウロの訪問についてだ。

パウロはこれまでの訪問で、コリントの人々の罪深さを見てきた。

とは言え、一度や二度見た程度で判断を下すのは早計だろう。

無知ゆえだったとか、思い違いがあったとか、そういう情状酌量の余地がある。

しかし、三度目ともなれば話は別。

散々指摘したことが出来ていないのなら「もう容赦しない」と。

時間を置いて見ることで、三人の証人による証言と同じってことにするんやな。

「もう容赦しない」って、容赦せんかったら何するんやろ。

……破門かな?

さて、どうだろうね。

コリントの人々がパウロに怒られずに済むことを祈るばかりさ。

『コリントの人々への第二の手紙』はこれでお終いだ。

最後に「結び」の全文を見て終わりとしよう。

『コリントの人々への第二の手紙』第13章11節

最後に、兄弟たち、それではお元気で。

不完全な所を改めなさい。励まし合いなさい。

思いを一つにしなさい。仲よく暮らしなさい。

そうすれば、愛と平和の源である神が、あなた方とともにいてくださいます。

聖なる口づけをもって、互いに挨拶を交わしなさい。

すべての聖なる人々が、あなた方によろしくとのことです。

主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが、みなさん一同とともにありますように。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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