9.アンティオコス4世エピファネスの死

エピソード文字数 953文字

アンティオコス王はエリマイスという町が金銀に富んでいることを耳にした。

王はエリマイスを占領し、略奪しようとした。

しかしその町の人々の抵抗により、王はバビロンに退却することとなった。

エリマイスという町がどこにあるかは分かっていない。

後のエリマイス王国がある辺りなのかな、と思う。

『マカバイ記2』ではペルセポリスと書かれているけれど同じ町だね。

緑色の箇所が紀元前51年頃のエリマイス王国版図だよ。
エルサレムからはけっこう離れたとこにあるな。

でかい国はあっちこっち大変やで。

王の不幸は続く。

彼は宰相リシアスがユダヤ人に敗れたという報告を受けた。

そしてあまりの心痛で、病気にかかってしまったんだ。

まあ、王ともなればストレスも半端無いやろうしな。

心中察するわ。

これしきのことで病にかかるなど。

やはり草は貧弱な生き物ですわね。

病にかかった人はその心も弱まるもの。

アンティオコス4世エピファネスはエルサレムについてあれこれ悔やみ始める。

アンティオコス王は死期が近いことを感じ、友人たちに言った。

「わたしはエルサレムでの悪行を思い起こす」

「金銀を奪い、理由なくユダの住民を滅ぼそうとした」

「それらの故に災いがこの身に降りかかってきたのだ」

『マカバイ記1』では心痛で病になり、すぐさま後悔の念を示した。

けれど『マカバイ記2』だと心痛ではなく、神の一撃によって倒れたとされる。

人を病気にするのは神様の得意技やからな。

さもありなん。

ところで、それはどのような病だったのかしら。
聖書に書かれている言葉を拾うとこんな感じだ。

「内臓の苦しみと激しい腹痛」

「目には蛆(うじ)が群がり」「肉は腐り落ちた」

ただ、学者たちの間でこれという定説は無いらしい。

結核、壊血病、ハンセン病などと言われている。

(『マカバイ記2』より)

王は病のため身が腐り、悪臭を放ち、彼を運んでくれる者はいなかった。

さすがの彼も高慢心を失い、悟り始めて言った。

「神に服従することは正しいことだ」

「死すべき身の人間が高慢であってはならない」

あら。

こちらは、それなりに抵抗を示したのですね。

少々の負けで気落ちするよりもよほど立派な態度でしてよ。

僕ら悪魔にしてみれば、「神」に対する叛逆の意思こそ美徳だからね。
うちは天使なんやけど。
もちろん!

存じ上げておりますわ、お姉さま。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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