第4話 瞞される雷光 その3
文字数 1,372文字
同じ時間帯、紫電は皐に誘われて市内のレストランにいた。
「味はまあいいぜ。家にいるコックに負けず劣らずだな。でもこのワインは値段の割に美味しくねえな」
「じゃあアンタって金持ちなんだ?」
「千葉県民から見ればどうせ八戸なんて田舎だがよ!」
しかし彼が豪邸に住んでいることに変わりはない。
「いいなあ。アタシもブランドもののバッグが欲しいんだけど、中々ね……」
「で、これからどうするんだ?」
雑談はさっさと切り上げて、紫電は本題に入った。
「どうやって緑祁の奴から、式神の札を借りる? 俺はその入手経路に詳しいわけじゃねえが、頼んでも断られるのがオチだぞ?」
「アンタの方から頼めないの? 知り合いなんでしょ?」
「緑祁に協力頼むんなら、全身の血を抜いて血の池地獄作った方がマシだぜ……」
「………じゃあさ、ブン取ってやればいいんじゃない?」
「は? 流石に無許可はマズいだろ!」
「でもさ、考えてみてよ? 研究すべき素材を緑祁は、多分無許可で所持してるんだよ? 【神代】にも言えない式神……もしかしたら緑祁、黒いことに手を染めてるかもね」
それは、犯罪を意味する。
「それはねえとは思うがな。アイツ、そういう曲がったことだけはしねえ」
「と、思ってるのはアンタだけかもよ? だって緑祁って一度、【神代】で指名手配されてるじゃん?」
「あれは、寄霊が再現した偽者だ!」
「その性質はわかってるけど…。言い換えれば緑祁、破壊活動をする気が、心のどこかにあるってことでしょう? ちょっと危険だよねーそんな人が未知の式神を持ってていいのかな?」
そう言われると、紫電も悩む。
(確かに緑祁の偽者は、俺に言った。過去を忘れることを許さないことが気に食わない、って。本物が言えない本音を、偽者が代弁した可能性もあり得るが……)
悩んだ彼の表情を見て皐は、
(あと一息だ)
直感する。もう少し唆してやれば、完全に味方につけられる。
(なら、こういうのはどうかな?)
ここで、紫電が緑祁のライバルであることを利用する。
「アンタ、決着をつけたいとは思わない?」
「そりゃ、な」
「でもさ、戦う理由がないんでしょう?」
実際には、紫電の方から緑祁に挑戦状を叩きつければいい。それで戦って雌雄を決すればいいのだが、
「確かに言われてみると……」
修練の時は、先を越されたくなかったから戦った。そして偽者の時は、罪を犯しているから正すべきと思って戦った。だが今はどうだ? 戦いたいと思ってはいるが、その理由がない。理由がなければ、緑祁は土俵に上がろうともしないだろう。
「アンタが式神を賭けて、緑祁に挑むの! 勝った方が負けた方の式神をもらえるって条件!」
「おい、それって結構危ない橋渡らねえか?」
「じゃあ何? 負けるのが怖いって?」
「な、なんだと? 俺が負ける? いいやそれはあり得ねえぜ! 俺の方が強いに決まってる!」
「なら証明してよ。緑祁に勝ってさ」
「いいだろう!」
その提案に、紫電はまんまと乗ってしまった。
(やっぱり、馬鹿じゃん。チョロいんだから)
皐は紫電に、その時が来るまで自分から離れないよう言い聞かせた。
「研究が上手くいったら、当然アンタにも報酬があるよ? 霊能力者ネットワークでも名前が上がる。でも逃げたらあげないからね?」
「わかった。じゃあ俺は準備しながらお前の近くにいることにするぜ」
「味はまあいいぜ。家にいるコックに負けず劣らずだな。でもこのワインは値段の割に美味しくねえな」
「じゃあアンタって金持ちなんだ?」
「千葉県民から見ればどうせ八戸なんて田舎だがよ!」
しかし彼が豪邸に住んでいることに変わりはない。
「いいなあ。アタシもブランドもののバッグが欲しいんだけど、中々ね……」
「で、これからどうするんだ?」
雑談はさっさと切り上げて、紫電は本題に入った。
「どうやって緑祁の奴から、式神の札を借りる? 俺はその入手経路に詳しいわけじゃねえが、頼んでも断られるのがオチだぞ?」
「アンタの方から頼めないの? 知り合いなんでしょ?」
「緑祁に協力頼むんなら、全身の血を抜いて血の池地獄作った方がマシだぜ……」
「………じゃあさ、ブン取ってやればいいんじゃない?」
「は? 流石に無許可はマズいだろ!」
「でもさ、考えてみてよ? 研究すべき素材を緑祁は、多分無許可で所持してるんだよ? 【神代】にも言えない式神……もしかしたら緑祁、黒いことに手を染めてるかもね」
それは、犯罪を意味する。
「それはねえとは思うがな。アイツ、そういう曲がったことだけはしねえ」
「と、思ってるのはアンタだけかもよ? だって緑祁って一度、【神代】で指名手配されてるじゃん?」
「あれは、寄霊が再現した偽者だ!」
「その性質はわかってるけど…。言い換えれば緑祁、破壊活動をする気が、心のどこかにあるってことでしょう? ちょっと危険だよねーそんな人が未知の式神を持ってていいのかな?」
そう言われると、紫電も悩む。
(確かに緑祁の偽者は、俺に言った。過去を忘れることを許さないことが気に食わない、って。本物が言えない本音を、偽者が代弁した可能性もあり得るが……)
悩んだ彼の表情を見て皐は、
(あと一息だ)
直感する。もう少し唆してやれば、完全に味方につけられる。
(なら、こういうのはどうかな?)
ここで、紫電が緑祁のライバルであることを利用する。
「アンタ、決着をつけたいとは思わない?」
「そりゃ、な」
「でもさ、戦う理由がないんでしょう?」
実際には、紫電の方から緑祁に挑戦状を叩きつければいい。それで戦って雌雄を決すればいいのだが、
「確かに言われてみると……」
修練の時は、先を越されたくなかったから戦った。そして偽者の時は、罪を犯しているから正すべきと思って戦った。だが今はどうだ? 戦いたいと思ってはいるが、その理由がない。理由がなければ、緑祁は土俵に上がろうともしないだろう。
「アンタが式神を賭けて、緑祁に挑むの! 勝った方が負けた方の式神をもらえるって条件!」
「おい、それって結構危ない橋渡らねえか?」
「じゃあ何? 負けるのが怖いって?」
「な、なんだと? 俺が負ける? いいやそれはあり得ねえぜ! 俺の方が強いに決まってる!」
「なら証明してよ。緑祁に勝ってさ」
「いいだろう!」
その提案に、紫電はまんまと乗ってしまった。
(やっぱり、馬鹿じゃん。チョロいんだから)
皐は紫電に、その時が来るまで自分から離れないよう言い聞かせた。
「研究が上手くいったら、当然アンタにも報酬があるよ? 霊能力者ネットワークでも名前が上がる。でも逃げたらあげないからね?」
「わかった。じゃあ俺は準備しながらお前の近くにいることにするぜ」